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2013-03-28 14:02

消費者被害の救済について

船田 元  元経済企画庁長官
 この1月から、私は自民党消費者問題調査会長として、懸案処理に当たっている。その中でも画期的な制度改正は、消費者が受けた金銭的被害を、集団で訴訟を起こすことによって、救済を図る仕組み作りである。事業者側が消費者との契約に反して、少額で多数の被害が生じた場合、これまでは消費者側の泣き寝入り、そして悪徳業者側の不当利得温存が、常態化してきた。しかしこれを放置しておくことは、法治国家としては由々しきことであり、まともな消費活動を阻害しかねない。

 新たな制度では、一定の要件を満たした適格消費者団体が被害者の訴えを代弁して訴訟を起こし、勝訴した時点で被害者を募って、事業者側の不当利得を吐き出させた上で、適切に配分するというもの。2段階の訴訟のやり方が、これまでにない画期的なものだ。ところがこの新制度に対して、いくつかの懸念が示されている。

 ひとつは、この制度を悪用して、金銭目的の弁護士などがどんどん訴訟を起こす、いわゆる「乱訴」の状況を作ってしまい、経済活動が阻害されるのではということだ。アメリカでは「クラスアクション」という同種の制度によって、実際に乱訴が発生している。しかし日本の場合は、この制度で訴訟を起こせる者を適格消費者団体のみに限定し、金銭的被害のみを対象として、慰謝料や身体被害を対象としない。十分歯止めはかかっているはずだ。

 またもうひとつの懸念は、事業者側が過度にこの制度を意識して、まともな経済活動が萎縮してしまうのではないかということだ。しかし、そもそも消費者を大切にする企業は、この制度を恐れる必要は全くない。またこのような制度があることによって、企業の消費者に向ける態度があらたまり、消費者の信頼感・安心感が醸成されて、経済活動はむしろプラスになっていくのではないか。すべてがプラスに動いていくとは限らないが、少なくとも今泣き寝入りしている消費者を救済し、悪徳企業の横行を防ぐには、最も効果的な手段であると考える。
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