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2013-02-19 11:20

(連載)「レーダー照射」に対し世界に「武力による威嚇の禁止」具体化を訴えよ(2)

角田 勝彦  団体役員
 中国は、口では「領土や領海、海洋権益の争いは友好的な話し合いによって平和的に解決する」と表明(2012年9月21日中国・ASEAN博覧会の席上の習近平国家副主席《当時》挨拶)しながら、黄海―東シナ海―南シナ海から西太平洋、インド洋に及ぶ広大な海域で勢力拡大に邁進し始め、各地でベトナムやフィリピンなど沿岸国との摩擦、係争を引き起こしている。南沙諸島の領有権を巡っては軍艦を使った威圧的な外交を続けている。尖閣問題もその一環である。日中間政治対話への兆し(たとえば公明党の山口那津男代表が1月下旬に習近平総書記と会談)もあり、「レーダー照射」後海軍の独走が上層部から抑制された兆候も見られるが、中国の膨張指向へは客観性を持った歯止めをかけねばならない。

 2月7日の衆院予算委員会で小野寺防衛相は「レーダー照射」は国連憲章の「武力による威嚇」に該当する可能性があると述べたが、「威嚇」の概念について国際的に具体的に議論がなされた例が少ないこともあり、その後事務的な検討も進められていないようである。しかし、「威嚇」概念の明確化・具体化は可能である。「レーダー照射」については中国も「威嚇」に該当することを認めざるを得ないであろう。中国は尖閣国有化に対抗して海洋監視船や航空機によるパトロールを「常態化」したとしているが、予想される軍艦類似の公船や大量の漁船の他国領海侵犯も「威嚇」に含めることも主張し得る。

 かかる提議はASEAN・ASEMや国連など国際世論の形成に役立つ場で行うことが妥当である。日中2国間でこのような協議を行っても進展は少ないだろう。そもそも中国が尖閣は自国領土との姿勢を変えることは望めない。両国の主張がどうあれ紛争を解決するのに威嚇を含み武力を用いてはならないとの原則にも「日本が(尖閣を)盗んだ」と抵抗するだろう。国連においても安保理では常任理事国である中国は、二国間紛争は両国間で解決すべきであるとの理論付けで妨害してくるだろう。国連で提議するなら、むしろ総会で、中小国の支援を求めるべきだろう。

 膨張する中国へ対処するために、米、東南アジア諸国、豪州、韓国、インド、日本などが包囲網を形成すべきであるとの見解がある。伝統的な同盟の考え方である。他方、国連に代表される集団安全保障体制は不戦の原則に立って、敵国を作らずに平和と繁栄を求めんとの道である。「威嚇や武力の行使をせずに、対話、交渉などにより平和的解決を求める」ことは中国にとってもよりよい道であろう。(おわり)
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