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2013-02-18 10:39

(連載)「レーダー照射」に対し世界に「武力による威嚇の禁止」具体化を訴えよ(1)

角田 勝彦  団体役員
 「レーダー照射」以後、中国のみならず我が国のマスコミやネットには「開戦前夜」といったおぞましい報道が溢れている。「愛国無罪」からの中国海軍独走の懸念もあり、現場での偶発的軍事衝突の回避が最優先事項である。判断ミスによる一発の銃弾が発射されないよう、またそれが戦火をもたらさないよう、日中防衛当局間のホットライン設置などの「海上連絡メカニズム」の早期運用が望ましい。最近の我が国の協議再開の呼びかけに中国が応じることを期待する。同時に必要なのは国連等での協議により膨張主義的行動を制約する国際基準を策定することである。基本は、中国に「レーダー照射」に類する「威嚇」を行わせないことである。挑発行為を行わせないことである。我が国は専守防衛の交戦規定で、自衛もおぼつかない現状だから、どんな厳しい基準ができても受け入れに問題はない。

 そのためには国連憲章も明示する「武力による威嚇の禁止」を具体化する必要がある。これは国連を含む多数国間問題として処理されなければならない。中国は、昨年11月のアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、日本の尖閣保有が「戦後の世界秩序と原則への挑戦」で「反ファシズム戦争の成果が否定されてはならない」などと主張したが、「戦後の世界秩序」の基礎は、国際紛争を解決するための「武力行使や武力による威嚇の禁止」にあるのである。なおASEMは、11月6日、東シナ海や南シナ海での領有権紛争を念頭に「威嚇や武力の行使をせずに、対話、交渉などにより平和的解決を求める」などを柱としたビエンチャン宣言を行った。

 射撃管制レーダーの照射(ロックオン、すなわち追尾状態)は、1月19日の中国フリゲート艦から自衛隊ヘリに対するもの(10分)と1月30日の中国フリゲート艦から護衛艦「ゆうだち」に対するもの(3分余)の2回あったとされる。ともに公海上で日中両国が互いに監視活動を行っている最中の事案である。軍事常識として、ロックオンは基本的に実弾の攻撃の標的に固定されたとして即時反撃をもたらしかねない行為(武力による威嚇)である。神経戦としたら、かくも長時間の照射は軍事上異常な由である。2月8日、中国の国防省、外務省が、日本側の発表を「虚偽」「捏造」と非難し始めたのは、弁明できないからであろう。

 日本政府は軍事上の秘密保全のためレーダー照射の証拠開示は控えるようであるが、米国務省のヌーランド報道官は2月11日の記者会見で、「(照射が)行われたことを確信している」と述べており、国際的判断は下されている。「レーダー照射」は「威嚇」である。6日、パネッタ米国防長官はワシントン市内での講演で「レーダー照射」に関する聴衆の質問に答え「中国が太平洋の平和と繁栄に自国の利益を見いだしたいのであれば、他国を威嚇したり、さらなる領土を求めて領有権問題を起こしたりすべきではない」と述べ、中国政府に対して挑発行為を中止するよう異例の強い調子で警告した。(つづく)
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