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2013-02-13 06:59

敵基地攻撃能力と集団的自衛権は不可避だ

杉浦 正章  政治評論家
 繁華街で出刃包丁を持って目の据わった刈り上げ頭の兄ちゃんが走り出したら、少なくとも刺又(さすまた)位はないと死傷者が出る一方となる。北朝鮮にとって国連安保理決議や非難声明などは、毎度のことで“馬耳東風”であろう。世間知らずの最高指導者・金正恩を分からせるためには「常識教育」をしなければならない。つまり、一発でも使用すれば北の国土はアリ1匹ですら、存在し得ない事態になるのだ。その核報復は米国に任せるとして、日本も敵基地先制攻撃能力を保持すると同時に、米国への核弾頭を撃ち落とすための「集団的自衛権の行使」を早期に是認する必要がある。この意味で、22日で調整されている大統領・オバマとの日米首脳会談は極めて重要な意味を持つ流れとなってきた。自衛隊の敵基地攻撃能力については、既に首相・安倍晋三は2009年の第2回核実験の際に「ミサイル発射基地を攻撃する能力について具体的に検討していくことは当然だ」と反応をしている。

 今回も、「政府としては従来から、他の手段がないと認められるものに限り、敵の基地を攻撃することは、憲法が認める自衛の範囲内に含まれる、という考えを示している」と、現行法上攻撃は可能との見解を国会で示した。さらに安倍は「現時点では、敵基地攻撃能力を保有することは考えていないが、国際情勢がどんどん変化しているので、国民の生命と財産を守るために何をすべきかという観点から、常に検討を行っていくべきだ」と、前向きの姿勢を表明した。具体的には海上発射型の巡航ミサイル導入や、戦闘機による攻撃能力拡大などの方法を検討しようということだ。加えて、米国に向かって打ち上げられた大陸間弾道弾を迎撃するための集団的自衛権の行使も、いよいよ現実味を持ってきている。北の核実験は小型化と高性能化によって、実用段階に相当近づいている状況と見るべきだからだ。ならず者が門前に集まって侵入しようとしているときに、「おじゃる、おじゃる」と公家のように右往左往している場合ではない。日本が壊滅しては何のための自衛隊かということになる。行使しなくても、その能力を毅然として保持しておくことは、緊迫化した極東情勢において不可欠なことと認識すべきである。

 安倍は、こうした喫緊の課題についてオバマと率直に意見を交換して、日米安保条約を強固なものにしなければならない。アメリカは緊迫した中東情勢も抱えて2正面作戦を強いられることになる。しかし、北の核ミサイルの開発は、ミサイル技術をイランから、核技術をパキスタンから得ていることは確実であり、好むと好まざるとにかかわらず総合戦略を強いられるのだ。北とイラン、パキスタンとの関係を断ち切らない限り、核ミサイルの開発は進展する一方である。米国は極東情勢がいよいよ一触即発の事態となれば、何らかの軍事行動に出ざるを得なくなる可能性もある。かつて米国はリビアのカダフィーの居宅を狙って空爆する強硬手段を取り、暗殺しようとしたことがある。カダフィーは外出しており危うく難を逃れたが、これにより原爆製造を断念した事は、有名な話である。1981年にはイスラエル空軍機がイラクのタムーズにあった原子力施設を爆撃壊滅させた例もある。情勢次第ではこういった強硬手段を北に対して取らざるを得なくなる可能性も否定できない。ミサイル発射、核実験に至る金正恩の意図を分析すれば、一般的には、アメリカを交渉のテーブルに引き込むためとの見方がある。

 しかし、まず第一の狙いは自分自身の体制固めだろう。国内的にはまだ不安定な地位を、ミサイルと核を使って確立しようとする思惑がみられる。もちろんその体制の基盤である軍部を懐柔しようとする意図もある。逆に、軍部は30歳といわれる金正恩を手なづけて、思い通りに使おうとしているに違いない。要するに刈り上げ頭の坊ちゃんの“突出”が意味するところのものは、本人が世界情勢に対する判断力や洞察力に全く欠けている事を物語っている。ひたすら核とミサイルで軍と民心を取り込みたい一心なのだ。ここは、国際社会が、孤立した軍事独裁国家がどうなる運命かを金正恩にあらゆる手段を講じて具体的に思い知らさなければならない時であろう。当面最大の注目点は、中国の出方である。中国は1月にミサイル発射に対する国連の制裁決議になんと賛成して、これに続く核実験をけん制してきた。おそらく習近平は3月の全人代における国家主席就任に先立って、飼い犬に手を噛まれたような怒りを覚えているに違いない。「怒髪天を衝く」思いであろう。しかし、中国と北には対米戦を戦った“血の結束”があり、戦略上も見捨てることはできまい。だからといって、国連の制裁決議に反対すれば、習近平は国際世論の批判にさらされる。就任早々評判が悪くなるのだ。中国は核実験の結果大きなジレンマを抱えざるを得ない状況になっている。悪いことは言わない。ここは中国も日米韓に同調して、国連の制裁決議容認に動くべき時だ。

 
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