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2013-01-29 10:18

(連載)アベノミクスを考える(1)

角田 勝彦  団体役員
 安倍首相は、1月28日通常国会における所信表明演説で経済再生を最大、喫緊の課題と位置付けた。同演説にはもの足りないとか繰り返しとかの批判はあるが、経済再生は国民がもっとも期待している分野であり、円安や株価上昇もあって安倍内閣支持率は上昇(25~27日日経等世論調査で68%)している。

 安倍政権の大胆な経済政策「アベノミクス」は海外でも一定の評価を受けている。筆者は、過去の本欄への投稿でインフレターゲットの導入に反対したこと(2011年1月7~8日「物価低落にこだわらず実質的経済成長を目指せ」)などが示すように、「アベノミクス」を全面支持するものではないが、今後の議論の成果を含めこれが政官学民の衆知を集めたものになることは確かである。期待通りの結果を生むかは疑問にしても、与野党が十分に討議して強い日本経済再生と国民生活向上の基礎とすることが望ましい。とくに成長戦略については、歴代政権が作成する成長戦略が重なり合う部分は多いのに、その都度放棄されてきている。そろそろ一定の合意を形成すべきである。

 なお、アベノミクスの今後最大の課題は規制緩和(TPP関連を含む)であろう。米欧にも共通の問題であるが、我が国では特定の利益団体が過剰な影響力を持っており、政治家はとくに選挙の際有権者を前に正論を唱えるのをためらう、応急措置以上の措置はとらない。このような民主主義につきまとう制約のなかで、少しずつ与野党合意を形成していくほか無いのだろう。「アベノミクス」は、デフレ・円高からの脱却を目指し、機動的な財政政策、大胆な金融政策、そして民間投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として同時展開するとされている。「ロケットスタート」とスピード感が強調されている。確かに、昨年の貿易赤字が6.9兆円と過去最大になった現在、経済再生は急ぐ必要があろう。

 財政面では、政府は、1月11日、国や地方などの負担を合わせて20.2兆円とする緊急経済対策を閣議決定した。復興・防災対策、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化を3本柱とする国の支出は10.3兆円である。これは24年度補正予算案に盛り込まれる。10・3兆円の半分を公共事業が占め、これらで実質国内総生産(GDP)を2%押し上げ、60万人の雇用をつくることを目指すとされた。金融面では、政府と日銀は、1月22日、日銀の金融政策決定会合後、消費者物価2%上昇を目指す「物価目標(インフレターゲット)」を掲げて、デフレ脱却をめざす共同声明を発表した。日銀は期限を定めず市場から国債などの資産を毎月13兆円程度買い入れる「無期限緩和」の採用を決め、2014年初めから実施する。(つづく)
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