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2013-01-16 06:54

安倍政権はスパイ対策で脇を固めよ

杉浦 正章  政治評論家
 要するに民主党政権の政策は中国などのスパイに筒抜けになっていたということだ。今後政権交代によって次々に明らかにされていくだろう。その第一段階が内閣官房参与・飯島勲による“暴露”だ。「左翼」80人が首相官邸に自由に出入りしていたというのだ。表面化しただけでも首相官邸、外務省、農水相に中国スパイが接近して自由に情報をとっていた公算が強い。これにサイバー攻撃が加わり環太平洋経済連携協定(TPP)の参加時期などについての前首相・野田佳彦のナマ発言がまるまる漏洩している。まさに民主党政権はスパイ天国であったのであり、3年3か月にわたるカウンターインテリジェンスの脆弱さを立て直すのは容易ではない。

 まず農水相の林芳正は1月15日、対中農産物輸出事業を巡って、中国のスパイである大使館一等書記官・李春光と農産省を巡る疑惑について、「事業の全体像を確認し、外に対して明らかにしていきたい」と発言、再調査の意向を表明した。中国の外交官がスパイとして立件された初の事件は、昨年5月に発覚、農水相・鹿野道彦と同副大臣・筒井信隆の事実上の更迭につながっている。李春光は中国の巧みなスパイ植え付け作戦に乗って、99年に松下政経塾に特別塾生として入塾。2005年の海上自衛隊潜水艦のノイズ除去技術に関する機密漏洩で、スパイとしての存在が公安当局に浮かび上がっていた。李は松下塾の人脈をたぐってついに外相・玄葉光一郎にまで到達している。玄葉の政治秘書と親しい関係となったのだ。その玄葉の秘書が何と昨年9月に北京を訪れ、既に逃げ帰っていた李と会談しているのだ。スパイと断定された人間と時の外相秘書が接触すれば、明らかに機微に渡る国家機密が漏洩されたとみるのが常識であろう。しかも送検された本人と会うとは、なんという国や捜査機関を小馬鹿にした話だろうか。

 こうして外務、農水両省との関わりがクローズアップされつつあるが、首相官邸も直撃されていたという見方が濃厚である。現に中国のスパイ組織である中国人民解放軍総参謀部第二部の武官が、堂々と名前を述べて出入りしていたという説がある。首相官邸は民主党政権発足時に筆者が 「民主党がかつての社会党の職員25人を最近内閣官房の専門調査員に押し込んでいる。これらの職員が事務局の主導権を握っている」として、中国や北朝鮮への機密漏洩を警告したとおり、旧社会党員の“巣”であった。文科相も同様に参院議員で元日教組教育政策委員長・那谷屋正義を文部科学政務官に押し込むなど、宿敵日教組に浸透されつつあった。何も社会党員や日教組がスパイに直結すると即断するわけではないが、政権の中枢にいれば、中国や北朝鮮のスパイが過去のつながりを背景に“好餌”とばかりターゲットにしたことは間違いあるまい。怪しいのだ。

 こうした中で映画ゴースト・バスターズならぬスパイ・バスターとして登場したのが飯島だ。飯島は民主党政権が作った官邸のありさまについてテレビで「官邸に戻って驚いた。めちゃめちゃで村役場以下」と慨嘆。とりわけ機密漏洩など危機管理対策がなっていないことを強調した。「官邸に出入りできるカード(入館パス)を全部調べたら発行数は官邸だけで500枚以上。全部で1300人を超えている。私の個人的調査でそうだった。その中で80人ぐらい。左翼的なメンバーが入っていた」と暴露。「ひどいことには前科一犯のやつまで入っていたりした」という驚がくの事実まで言及した。飯島はすぐに没収したことを明らかにすると共に「内調や警察庁は何をやってたのか。もし外交や安全保障あるいは為替の問題が、外に漏れたら危うく沈没ですよ」と関係機関を批判した。たしかに民主党政権になってからは内閣情報調査室も、閣僚の経歴の事前洗い出しなどで手抜かりが多く、就任して発覚、即辞任につながるケースが多出した。昔は「北朝鮮情報の内調」であったが、「今はろくな情報を挙げてこない」と民主党政権幹部がぼやいていたものだ。

 要するに民主党政権は「情報ダダ漏れ政権」であり、おまけに官僚の徹底的軽視策をとった。周りの機関も、こんな政権に情報は上げられないという躊躇(ちゅうちょ)が働いたことは確かであろう。首相・鳩山由紀夫以降の首相の体たらくがそうさせたのだから、自業自得であった。しかし、国家としての3年3か月が、るる述べてきたようにスパイ天国であったのはゆゆしき問題だ。ここは首相・安倍晋三が、わきをしっかりと固めるときだ。官邸はスパイ対策はもちろん、中国による露骨なサイバー攻撃をはねつけるシステムを早期に強化すべきだ。どんなウイルスを残しているか分からないから、官邸のパソコンなど電子機器をすべて新たに取り替えることなど常識だ。米国でも機密漏洩事件は多いが、もっと高度なスパイによるものがほとんどだ。入国した途端にマークされた李春光ほど幼稚なものではない。日本ほどやすやすとスパイが活動できる国はない。民主党政権を米国が信用しなくなったのも、ダダ漏れが原因だ。新たな日米安保体制を築くためにもスパイ対策は焦眉の急である。
 
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