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2012-12-24 16:55

東アジアにおける「グレートゲーム」の展開と日本

松井 啓  日本大学講師・元大使
 東アジアを廻って新しい「グレートゲーム」(地域における大国の覇権争い)が展開されている。ロシア、中国、アメリカの三強国の狭間にある日本の価値は高まっているので、このゲームのチャンスを見逃すべきではない。中国の経済成長は目覚ましくGDPでは既に日本を凌駕し、世界の工場から世界の市場、更には高まる外貨準備を駆使した対外投資国に成長しつつある。それによるナショナリズムの高揚と毎年2桁の軍備増強により、海軍力、宇宙開発においても近々アメリカを脅かす存在に至るであろう。尖閣諸島を廻っての「反日暴動」では、中国も経済的打撃を受け、民意の制御の難しさを認識したであろう。中国はフィリピン、ベトナム等との領土問題にも軍事的脅威をちらつかせている。中国の膨張を如何に食い止めるかは、東南アジア諸国だけでなく、オーストラリア、インドにとっても大きな課題となっている。ロシアを含めた関係諸国間の連携を図るべきである。

 ロシアは自国経済の近代化が進まず、石油・ガス等の天然資源の輸出依存体制から脱却できずにおり、中国の経済的、軍事的台頭に脅威を抱いている。更には開発が遅れているシベリア・極東の人口が希薄となっているため、開発の起爆剤とすべくウラジオストクでの新都市建設を急ぎ、9月にはAPECサミットを開催したが、その経済的効果は期待外れとなった。ロシアにとっては南からの中国の人口圧力は歴史的な脅威であり、SCO(上海協力機構)や独裁政権の支援等の国際舞台で便宜上の協力はしているが、何世紀にもわたって鬱積された相互不信はわだかまったままである。本年5月に大統領に返り咲いたプーチンにとっては、極東の開発は最優先事項であるが、その場合の協力相手は米、独、仏、英などではなく、至近距離に位置し、資本、技術に加え、経営ノウハウを有する日本である。プーチン大統領の日本との関係改善にかける期待が非常に大きいことは就任以降の彼の諸発言からうかがえる。但し、「始め!」の号令をかけた北方領土問題に関しては、最大譲っても「引き分け」以外は頭にないようで、日本は長期的な国益を見極めたうえでの総合的戦略が必要である。

 アメリカは世界戦略の「アジア・シフト」を決めた。日本で、いたずらにアメリカに反発して、関係をこじらせた政権が、退陣したので、アメリカは対日関係のリセットに前向きになるであろうが、経済・軍事面で超大国の地位から滑り落ちてしまった以上は、特に中国の急速な台頭に対峙するために、従来以上に日本の協力、支援、貢献を期待、要望してくるであろう。日本は国益維持、同盟関係強化のために、長期的地球規模的観点から何をすべきかを積極的に検討すべきである。

 韓国は、日本と同様に米国との同盟関係を維持しながら、自由と民主主義、市場経済という価値観を共有して、経済発展を成し遂げてきた。核開発に走る北朝鮮を直近に抱える日韓両国は、米、中、露3強国とのバランスを取って、平和と安定を維持していかなければならない。その意味では、両国は一種の「運命共同体」である。竹島問題で国民感情を煽った大統領が去った現在、未来指向での関係改善への機運が高まってきている。アジア諸国は、中国の台頭を懸念し、その海域での安全航行、貿易、金融、災害対策、開発協力等での日韓両国のイニシアチブに期待している。両国は反目し合っている時期にはない。
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