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2012-12-13 06:58

小沢、石原の乱入で第3極失速

杉浦 正章  政治評論家
 第3極の不振は“政治に疎い”自治体の長が、すれっからしの政治家2人にだまされた構図が浮き上がっている。石原慎太郎と組んだ日本維新の会も、小沢一郎と組んだ日本未来の党も、そのマイナス効果だけが浮き彫りとなり、ひたすら自民圧勝へと導く結果をもたらしている。一方で、起死回生の“野望”を抱いた小沢、石原の2人は、民主党にだまされ続けた有権者の目が肥えて、再起不能の瀬戸際に立たされている。「とんぼ釣り今日は何処まで行ったやら」は加賀の千代女の句だが、「小沢さん」と置き換えても当てはまる。小沢一郎の遊説活動に一貫性がないのだ。12月4日の公示日は愛媛の田舎町で演説、得意の川上作戦を展開するかと思ったら、その後は鳴かず飛ばず。各社の世論調査で大敗北が伝えられると、いても立ってもいられないのか、10日には急きょ都内6カ所で演説。候補者個人の応援ではなく、比例票の発掘に当たった。そして12日には異例の地元入り。投票日前まで地元にへばりつくというのだ。地元では「小選挙区で敗れたら引退」とまで口走り、まさに小沢王国背水の陣の様相だ。この揺れる小沢の姿は、まさに第3極の実態を現しているのだ。

 小沢は、秋口から3回に渡って滋賀県知事・嘉田由紀子と秘密会談を持ち、口説きに口説いたようだ。マスコミの脱原発の動きに乗ろうと戦略を立て、知事で一番先鋭的な嘉田を担げば「風」に乗れると考えたのだ。しかし、今度ばかりは小沢のもくろみは大外れにはずれた。脱原発の風などそよとも吹かず、逆に原発推進を公言する自民党が躍進する結果を招いたのだ。嘉田も田舎の知事レベルの“政治能力”しか発揮できなかった。選挙戦は、最初から小沢のことでの言い訳だ。「言い訳の選挙は必ず負ける」というジンクスを知らない。「小沢さんには表に出ないでくださいということで話が付いている」と言われても、誰も信ずるものはいない。現に表に出ているのだ。「小沢さんは使いこなさせていただきます」と演説すればするほど、“冷笑”が返ってきていることも知らない。衰えたりとは言え、海千山千の政界の実力者を「使いこなす」が聞いてあきれるのだ。こうして小沢チルドレンなど61人の候補のうち当選するのは10人台という散々たる結果を招きそうなのだ。

 一方、維新も石原に抱きつかれて、橋下徹の持ち味である鋭角の切れ味が著しく鈍化した。原発推進論の石原の主張で、「原発ゼロ」があいまいとなった。逆に「核シュミレーション」発言や「憲法9条があるから拉致被害者を取り戻せない」という戦争志向の発言など、極右国粋主義者の「鎧(よろい)丸出し」となり、石原ペースの印象が強まった。その思考能力も老化現象丸出しで、記者会見でもすぐぶち切れる。中国暴動の責任を問われて「そっちの責任だ」と、支離滅裂にもメディアに食ってかかる。そもそも石原の登場には本人の自信過剰と橋下の誤算が背景にある。都知事を13年もやると、一国一城の主だから回りは何でも言うことを聞く。こともあろうに尖閣諸島を都が買うと言っても、ろくろく反対論も出ない。やりたい放題の“裸の王様”になってしまったのだ。おまけに尖閣で募金を募ればすぐに14億円も集まる。これで石原は新党を作れば石原ブームが生じて、首相になれると浅はかにも見誤ったのだ。橋下の誤算も、東京での維新ブームを起こすには石原の力を利用するしかない、と判断したことにある。

 しかし、都民の反応は逆だった。名誉職の色彩が強い都知事には向くと判断しても、生活に直結する国政選挙のリーダーとは考えなかった。おまけに新銀行東京の破たんでは都民1人あたり約11000円に達するツケを払わせ、反省の弁はゼロ。発言はインテリ層が多く、平和志向の強い都民が一番嫌う極右の思想に貫かれている。都民の間にはまさに“拒絶反応”が生じつつあるのだ。その証拠に、維新は、石原自らの地盤である東京都で小選挙区全敗の危機に陥った。小選挙区で出馬していたら石原も落選したかもしれない。橋下は正直にも「東京では惨敗の状況だ。国民のご判断であれば仕方がない」と東京“落城”を宣言した。かくして「石原首相」の目は潰えたのだ。都民は上方落語は好きでも“上方政治”には動かされないということなのだ。こうして漁夫の利を占めるのは自民党という構図となった。維新対みんなの党の食い合いも、自民党を当選させる。42選挙区でつぶし合いをしている民主党と未来の党も自民党を当選させるといった具合だ。圧勝した自民党は、衆院では連立を組む必要もないが、公明とは連立して、参院があるから民主党との部分連合へと動くだろう。維新ともケースバイケースだ。石原の出番は改憲しかないが、改憲達成まで肉体的条件が持つまい。80歳だ。小沢も70歳で、小党のトップになってもせいぜい余生をしのぐ程度。政治への影響力は生じにくい。
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