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2012-11-30 21:33

パレスチナをオブザーバー国とする国連決議への日本の賛成

宮崎 厚  ベンチャー企業顧問
 世界190数か国の国連加盟国のうち138か国が賛成した議案に、日本が賛成したそうで安心しました。日本の政治家は外交を語るときによく「国益」と言いますが、2国間交渉、特に領土問題では、双方が国益を語っても絶対に問題は解決しません。現に中国は尖閣諸島に関して「核心的利益」などと言って、「妥協しない」ことを宣言しています。第二次大戦後の世界では、武力による領土獲得の時代は終わったはずであるにもかかわらず、イスラエルは武力で周辺を制圧し、入植によって実効支配をして、領土を獲得するのを常套手段にしています。ヨルダン川西岸、ゴラン高原などを見れば明らかです。

 「当事者同士の話し合いで解決」というのは、耳当たりは良くても、何の解決にもなりません。日本の場合、北方領土にしろ、尖閣・竹島にしろ、武力衝突以外の方法でこれを取戻し、また守って行くには、パレスチナ問題に無関心であってはなりません。世界の他地域のことに無関心であっては、永久に国連の常任理事国にはなれません。フィリピン、ベトナムが南沙諸島の問題で中国への対策に苦しんでいた時、日本は無関心であったのではないでしょうか。尖閣問題が起こってから急にこれらの諸国に同情しても、あまり意味がありません。イスラエルは「4~5000年前から2000年前まで、自分たちはパレスチナの地に住んでいた」といっています。中国は「400年前の明の時代から尖閣諸島は自国の領土であった」と言っています。いまに「2000年前の卑弥呼以前、あるいは縄文時代に、日本は漢か秦の支配下にあった」などと言われかねません。

 しかし今回、その中国もパレスチナの肩を持ちました。ロシアもです。これは日本にとって重要なことです。つまり、イスラエルは米国オバマ大統領の述べたとおり、1967年以前の国境に戻るべきなのです。それが世界の大多数の意見です。実は、イスラエルのパレスチナ占領を認めないことこそが、ロシアから北方領土を返還させ、韓国から竹島を取り戻し、中国を尖閣諸島から遠ざける論理だと思います。パレスチナを支持したことにより、ロシアや中国は日本の主張を聞き入れざるを得なくなるのです。「イスラエルjのようなことはするな」と言えるのですから。他方、米国の良いところは、米国のイスラエル支持の理由が、同盟国イスラエルに対して「米国は同盟国を裏切らない」という意味で反対したことです。この論理は日米同盟にとっても大きな意味があります。日本政府はそこの判断に苦しんだのでしょう。本当は同盟国が間違ったときには、それを指摘してアドバイスし、判断を正してあげるほうが親切で、真の協力者ではないかと思います。

 やはり問題は、イスラエルだと思います。今回のことでイスラエルは、パレスチナに対して報復をするそうです。つまり、賛成した138国(日本を含め)がイスラエルから報復を受けることとなりそうです。愚かなことです。私は、ユダヤ系の人々とも長くビジネスで交流した経験があり、ユダヤ人を悪者であると感じたことはありません。それなのになぜイスラエル国家、イスラエル政府となると、まるで尖閣問題の中国や、李承晩ラインを引いた当時の韓国大統領、北方領土を占領した旧ソ連のスターリンのような振る舞いになるのか、いつも理解に苦しんできました。イスラエルにまともな国になってほしいと思います。玄葉外相はメリット、デメリットを考え、賛否判断に迷ったそうですが、この問題は、そんなに迷う問題でしょうか。「世界のことに無関心であってはいけない」というだけのことではないでしょうか。外交においてやたら目先の「国益」を追って、中国の「中華思想」やイスラエルの「選民意識」にぶつかっても、何も得ることはありません。まずは世界のことに関心を持って、寄って立つ論理を形成して、世界に通用する日本の主張を形成して行きたいものです。
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