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2012-11-21 06:53

野田と選挙区に追い詰められた鳩山の引退

杉浦 正章  政治評論家
 新聞川柳で<いつまでも残って消えぬ鳩の糞(ふん)>といわれてきた元首相・鳩山由紀夫が、ついに総選挙出馬を断念した。<うるさくて電池抜かれた鳩時計>となってしまった。最大の理由は“落選”の憂き目を見たくないというという選挙事情だろう。鳩山はいわば民主党ポピュリズムの象徴的存在であったが、首相・野田佳彦の「出たい奴は出ていけ」という「純化路線」で最大のターゲットでもあった。これにより野田の「自公民路線」への障害物の一つが除去されることになり、選挙後は同路線へと傾斜する可能性が一段と高まった。鳩山は解散後ひしひしと党執行部の“圧力”を感じていたに違いない。11月17日も地元で「官邸は鳩山を公認しないことで支持率が上がると踏んでいる。小泉さんと同じ事をしようとしている」と述べたが、これは鳩山の自分に対する過大評価だ。小泉が2003年の総選挙で元首相・中曽根康弘、宮沢喜一の公認をしなかったことを意識しての発言だ。しかし、小泉は高齢を理由に両元首相を公認しなかっただけであり、今回の場合とは全く異なる。また野田は鳩山を切ったからと言って、支持率が上昇に転ずるなどとは思っていまい。

 野田にとっての最大の理由は、鳩山に選挙活動をされては、民主党が分裂選挙をしている印象が強くなり、党全体に影響を与えるということだろう。鳩山は野田が命をかけた消費増税に反対して、党員資格停止処分を受けており、最近では野田が推進しようとしている環太平洋経済連携協定(TPP)についても「反対する考えを変えるわけにはいかない」と真っ向から反対している。最大の争点に対して党内から反対されては、野田としても選挙対策にならない。執行部にに命じて公認の前提条件として党の方針に反対しないとの誓約書の署名を求めさせたのだ。その上で野田は「掲げる政策に賛同し、その実現のためにも歯を食いしばって戦う同志、というのが公認のけじめだ。重たい立場の人でも守っていただく」と、鳩山を意識した発言をしている。また選挙区の北海道9区も、自民党による政権奪還の象徴区となっており、元スケート選手で道議の堀井学に追い詰められて、落選必至の状況に立ち至っていた。自民党幹事長代行・菅義偉も「勝てそうだった。もう出馬を断念すると思っていたが、その通りになった」と述べている。こうして野田に追い込まれ、地元でも追い込まれて、出馬を断念せざるを得なくなったのが実情だ。

 一方で、維新の台頭は既成政党間に緊張感を走らせており、自民党から20日、「自公民部分連合」ののろしが上がった。幹事長・石破茂が自公民路線について「連立という話ではないが、政策が合うのならスピーディーに進めていかないと、国民のためにならない。基本的には自公民3党だ」と発言した。とりあえず自公連立を実現した上で、政策面での自公民部分連合を推し進めようということだ。しかしその最大の障害が消費増税反対の鳩山であったのだ。自民党からも敬遠する声が上がっていた。野田が反対者切り捨ての純化路線を目指すのも、横目で「自公民」をにらんでいることなのだろう。鳩山引退はその障害を除去することになる。石破はさっそく「民主党が純化された集団として政界再編の一つの核になることは望ましい」と鳩山引退歓迎の意向を表明した。

 そもそも3年前の総選挙でも、筆者は鳩山の欺瞞(ぎまん)性を指摘して警鐘を鳴らし続けたが、衆愚の浮動票が圧勝させてしまった。調子に乗って鳩山は外交では愚かにも「日米中正3角形」の関係を唱え、普天間では「最低でも県外」と愚鈍な発言を繰り返した。揚げ句の果てに、「トラスト・ミー」とすり寄ったオバマからは全然信用されない状況を作ってしまった。内政では、事務次官会議を廃止して、これが国政に致命傷とも言える影響をもたらした。事業仕分けなる物も欺瞞のポピュリズムに過ぎなかった。それでも幹事長・輿石東の意向が反映してか、民主党は鳩山を外交担当の最高顧問に任命。自民党副総裁・高村正彦から17日、「日本には1億人以上も人がいるので、鳩山氏みたいな人がいることはそれほど驚くことではないが、政権与党の外交担当最高顧問に復帰するのは、大いに驚くべきことだ」と批判されるという始末。元々鳩山は、首相退陣に際して不出馬を宣言していたのだから、そもそもの存在が未練がましかったのだ。これで「サイテーでも国外」にでも去ってくれると、もっとすっきりする。宇宙人だから故郷の宇宙に戻ってくれてもいい。
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