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2012-11-14 09:13

ベンガジの惨劇に繋がるペトレイアス証言の疑問

梨絵 サンストロム  ジャーナリスト
 オバマ第二次政権が確定した選挙後の出足は、第3日目からセックス、スパイ、欺瞞、カヴァーアップと、まるでシェークスピア劇かタブロイ紙の三文記事の様相を呈し始めた。ベンガジに関しては、オバマを庇って彼に不利な報道を控えていたメディアも、センセーショナルな「セックス」が絡んだ途端に飛びついて、今ではスッポンのようにこの成り行きに噛みついている。今日のホワイトハウスの記者会見では、政策、緊急を要する経済問題への質問はそこのけで、「大統領はいつペトレイアスの不倫問題を知ったのか」が関心の的になっていた。「大統領はあくまでも選挙後の翌日まで知らなかった」と、今日ホワイトハウス報道官ジェイ・カーニーは苦しげに答弁した。5か所のテレビ局でベンガジ襲撃問題に関して、真実とは程遠い証言をしてカヴァーアップに奔走した国連大使スーザン・ライスが、ヒラリー・クリントンの後継者として「次期国務長官に栄転」という理由も質問されたが、カーニー報道官は「彼女は非常に優秀で、有能な人物であり、其の功績はホワイトハウスからも高く評価されている」とのみ答えた。

 なぜ彼女が候補に挙がっているのか。ペトレイアスはベンガジ襲撃の直後に議会へ出頭し、群衆の自然発生的暴動と証言していた。スパイ・エージェンシーのボスCIA長官が、なぜそのような発言をしたのか。オバマからのプレッシャーがあり、彼は保身を考えたのか。アメリカのメディアは今、ベンガジゲートから枝を出した「四つ星将軍のセックスゲート」というソープオペラに殺到している。ジル・ケリーというフロリダ州タンパ市に住む女性と、ペトレイアスの後任としてアフガニスタン駐在の最高司令官になったジョン・アレン大将とのロマンスが、今日の新たなスキャンダルになった。ジル・ケリーは著名な外科医と結婚している37歳の社交界の女性で、ペトレイアス一家との親交がある。ジルはペトレイアスの不倫相手ポーラ・ブロードウエルから匿名の脅迫メールを送られ、FBIに保護を求めた。そのFBIエージェントはジルに魅せられ、彼自身の半裸の写真を彼女に贈った理由から、現在勤務から降ろされ謹慎を命じられている。

 ジルのコンピューターを調査していたFBIは、ジルと最高司令官ジョン・アレンとの3万通にも及ぶメールのやり取りを発見、押収した。アレン大将は現役の将軍であり、このスキャンダルの結果で軍法会議に処せられる可能性もある。今日オバマ大統領は予定されていたアレン大将の全ヨーロッパ最高司令官としての栄転指名を取り下げた。新たな情報によると、司法長官ホルダーはペトレイアスの情事を9月には知らされていたという。オバマとの密着が周知の事実であるホルダーが、その情報をオバマに告げなかったとは信じられない。知らされていたことが真実なら、なぜ彼はオバマと議会に報告しなかったのか。この奇怪極まる状況の鎖は、何に繋がり、どこまで伸びてゆくのだろうか。上院諜報委員会の委員長ダイアン・ファインシュタインは、国家の機密に関する問題を数日前まで知らされていなかったことについて遺憾と怒りの声明を出し、「ペトレイアスに召喚状を出しても真実を明かす」と言明した。

 ヒラリー・クリントン国務長官はオーストラリアでの会合を理由に「委員会での証言は欠席する」という途方もない理由の声明を出した。オバマ大統領、クリントン国務長官、ペトレイアス元CIA長官、スーザン・ライス国連大使、ホルダー司法長官、アフガニスタン駐在の最高司令官アレン大将、ざっとこれだけの高官たちが関連し、ベンガジの惨劇とその責任のカヴァーアップから始まり、セックス、スパイ、疑惑、と日ごとに混乱していく新事実への疑問は限りないが、ホワイトハウスからの答えはない。昨日アメリカは在郷軍人、戦死者に敬意を示すVeteran\'s dayという祭日であった。テレビでは多くの退役軍人が星条旗を逆さまに掲げ始めた、と報道した。逆さの星条旗の意味は、戦場で救助を求めるときなど、兵士たちの苦境を知らせるシグナルである。オバマがベンガジでアメリカ大使とほか3人のアメリカ人を見殺しにした、という怒りと悲嘆の抗議である。
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