国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-11-12 12:47

(連載)「戦後レジームの見直し」の意味を再考せよ(1)

河村 洋  外交評論家
 野田政権がレイムダックの様相を増している現在、自民党の安倍晋三総裁が次期首相になる公算が高い。安倍氏と他の自民党政治家だけでなく、ナショナリスト最右翼の石原慎太郎氏とポピュリストの橋下徹氏に率いられる「第三極」においても、保守派の声は高まっている。そうした保守派の間ではかなり多くの政治家が「戦後レジームの見直し」を主張し、その多くがアメリカによる「押し付け」の民主化を公然と批判している。そうした発言によって、日本が戦前のナショナリズムに逆戻りしているかのような誤ったメッセージを国際社会に送っているのではないかと懸念される。

 むしろ日本は戦後のレジーム・チェンジを肯定し、西側同盟の中での役割をより積極的に受け入れるべきだと思われる。ここで強調したいことは、小泉政権以降の自民党政権はアメリカ主導で行われたイラクとアフガニスタンのレジーム・チェンジを支持したが、それらはいずれも日本とドイツに倣ったものであった。中東の民主化を支持しながら、アメリカ主導の占領軍による戦後の改革を「押し付け」であるとして非難するのは、論理的に成り立たない。小泉純一郎氏以降の自民党の首相達は、テロとの戦いへの勝利、そして特にアル・カイダに代表されるテロ組織への核の拡散の阻止のために、そうしたレジーム・チェンジを支持した。

 私は小泉政権以降の自民党首相達が米軍によるサダム・フセインとタリバン打倒を本気で支持したものと固く信じている。小泉氏の後継首相達は両戦争の開戦時に閣僚の座にあった。麻生太郎氏に至ってはブッシュ政権の方針と呼応するかのように「自由と繁栄の弧」の構想を打ち出した。オバマ政権はイラク、アフガニスタンからの撤退を決定したが、イラク戦争に反対したフランスもドイツも含めて、国際社会は、両国の復興と治安部隊の訓練への支援を模索している。日本はアフガニスタン復興支援国際会議を主催した実績もある。

 であるとすれば、日本は、ここでアメリカによる占領統治に不満を述べるよりも、チベットや東トルキスタンをも含めた中東から中国に至る地域のレジーム・チェンジのロール・モデルとして行動すべきではないか。すなわち、日本の民主化の成功への道程を示し、この地域の諸国民にも自らと同様の道を歩むように呼びかけ説得してゆくのである。これによって国際舞台での日本の存在感は増すであろう。日本がイラクとアフガニスタンのレジーム・チェンジを支持したことに何も間違いはない。政治家達はこのことにもっと自信を持つべきである。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム