国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2006-11-13 18:58

非核3原則、+1か-1か?

角田勝彦  団体役員
 最近、中川昭一自民党政調会長や麻生太郎外相などの「核論議」容認論を巡って、かしましい議論が交わされている。野党4党は外相罷免を要求し、11月9日安倍晋三首相が「非核3原則を堅持する方針で一致しているから問題ない」と答えたのに対し、首相のタカ派的部分を代弁させているのではないかと首相の責任を問う可能性すら示唆している。その後の賛否両論を見ていると、問題は「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核3原則に「論ぜず」の第4原則を足すか、「持ち込ませず」の原則を減らすかに収斂しつつあるようである。

 両者ともに、あまり現実的な議論ではない。ほとんどの「論ぜず」論者は、意図的だろうが「核論議」容認論を「核兵器保有論」と呼んでいる。中川政調会長自身、自分は核保有論者でないと言っている以上先走り過ぎる。日本も自前の核兵器を作って保有すべしとの主張は、政治的(選挙、米国を含む世界の反対)、軍事技術的(実験や配備の困難)、経済的(原発も止まる)、社会的(国民感情)現実から、あまり論議しなくても、すぐ否定的結論が出る問題である。吉田康彦氏もこの点を指摘している。論議自体が国是に反するとか、「個人的発言」と称しても公人の発言として外国に誤解を与えるとか言って、議論を封じるほどのことはないだろう。そもそも、安全保障は、考えられないことを考えるのが基礎である。

 なお、私がメタモダン論(投稿147)で想定したようなさまざまな近未来(核拡散で分極化の世界を含む)において、どう対応すべきかは、学問的にも論議に値する問題と思われる。「帝国以後」のエマニュエル・トッドも核の偏在こそ問題で日本も保有すればよいとしている。「持ち込ませず」原則は、米ソ冷戦時代、日米間の解釈に差異があるのではないかと疑われてきた。例えばライシャワー元駐日大使は「核搭載の米海軍艦艇は日本の港湾にそのまま(核兵器を排除することなく)寄港している」という趣旨の発言をした(米国は具体的な核装備の有無を明らかにしない方針だった)。

 石原慎太郎氏が11月7日付「JFIRコラム」で触れたような過去の経緯はともかく、最近の持ち込み容認論は、MD構想に関連してのものと思われるが、冷戦終了後の米国の政策変更を無視しているようである。米国ブッシュ(父)大統領は、1991年、ヨーロッパ配備の一部を除く戦術核兵器を米本国以外(在韓米軍基地含む)から撤去する旨発表した。核のボタンを大統領のみが持つ政策への変更である。なお、中国との関係はICBMなど戦略核の問題である。米中間にはミサイルの相互標準外しの合意ができた。1992年7月には戦術核撤去完了が宣言された。北朝鮮の核に対抗するため、この政策が変更される状態にはない。米国が日本へ核を持ち込む意図があって初めて、日本側の意図が問題になるのである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム