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2012-10-26 07:07

日本に極右国粋主義の第3極は不要だ

杉浦 正章  政治評論家
 第3極と言うが、極右国粋主義の第3極が今の日本に必要な時だろうか。まったくの時代錯誤に過ぎないと思う。石原慎太郎は新党結成の記者会見で中央官僚制度批判に終始して、あえて憲法破棄論に象徴される外交・安保上の持論に深く触れなかった。これが何を意味するかと言えば、さすがに「普段の極論を述べては選挙にならない」という思惑が先行したのだ。だから官僚制度の在り方への批判ばかりをとりとめもなく繰り返したのだが、これは民主党の3年前の主張と何ら変わらない。結果は3年間の失政に次ぐ失政だ。年齢は80歳。母体になるたちあがれ日本も代表・平沼赳夫以下息も絶え絶えの状態。看板を書き換えても、弾みは生まれない。石原ブームなど幻想に過ぎない。唯一最大の注目点は、弾みで民主党から新党参加の離党者が出て、首相・野田佳彦への不信任案が成立する状況が出来るかどうかだ。石原の“持論隠し”作戦は老獪の一語に尽きる。焦点の尖閣問題についても、せいぜい船だまりの建設に触れただけだ。石原が首相になることは100%あり得ないが、国政を左右するキャスティング・ボートなどを握ったときには、日中関係は軍事衝突の危機にまで発展する可能性があることを警告しておく。

 国家戦略相・前原誠司が先に暴露した問題を見れば明白だ。前原は「8月に行われた石原氏と野田佳彦首相との会談で、石原氏は中国との戦争も辞せずと話した」と発言したのだ。石原は「そんなことは言っていない」と否定しているが、自分の発言を「言ってない」と否定するのは、石原の常とう手段だ。筆者が官邸周辺から聞くところによると、「戦争になってもいいじゃないか」と述べたのは事実だ。これを受けて野田は、尖閣を石原の思うがままにしておいたら、本当に戦争になりかねないと判断して、国の所有を決断したのだ。それも事を急ぎすぎて、日中関係を破滅状態に陥らせてしまった。すべての発端は石原の都による尖閣購入発言にある。石原の極右国粋主義は1973年に中川一郎らと自民党に「青嵐会」を結成したときから変わらないが、近ごろは加齢とともに一層極端になって来ている。

 「日本は核を持つべきだ。徴兵制をやれば良い」と持論の核武装論を展開。「核保有の模擬実験は可能。3カ月でできる」「プルトニウムは山ほどある」とも述べた。もっとも許せないのは「大震災は天罰」発言だ。被災者の気持ちをどれほど傷つけたことであろうか。東京の有権者の甘さが、長期に知事職を壟(ろう)断させたが、最大の失政は、自ら旗を振って設立した新銀行東京だ。素人丸出しの経営で、ピラニアのように出資を食われ、あっと言う間に累積赤字は東京都の出資分1000億円を超過。追加出資の400億円と合わせれば、都民の負担は1人あたり約1万1000円に達する。反省の弁など一言もない。都政担当の記者のレベルでは、これら外交・安保、内政上の問題を突く能力に欠けるのだろう。記者会見の質問は低調に終始した。そもそも3極と言っても、実現可能だろうか。平沼は「細かいことは言わずに、西は維新、東は石原でいい」と述べるが、基本政策、理念が一致しなくて、むりやり連合を組んでも、選挙目当ての野合に過ぎない。日本維新の会と石原の主張は、重要ポイントで大きく食い違っている。その上石原がもっぱら維新に秋波を送っており、橋下は冷静だ。

 まず石原は憲法破棄論である。破棄して核武装、徴兵制を実現する新憲法を制定するというのだ。維新は改憲だ。原発も、維新が脱原発なのに対して、石原は原発維持。消費税に関しても、維新の地方税化に石原は反対している。維新が提携交渉を進めているみんなの党代表・渡辺喜美は「増税や原発を容認するなら、民主・自民・公明の3党の補完勢力になり、『維新』ではなく、よくて『新選組』だ」と激しい石原批判を展開している。2大政党への影響だが、自民党は躍進傾向を見せており、石原新党が食い込める余地はないだろう。新党はたちあがれ日本とも東京などでは競合する。石原が堂々と選挙区から立候補することを避け、こそこそと比例選東京ブロックから出馬する方針なのも、安易な逃げの姿勢と解釈できる。結局食われるのは民主党だ。維新と石原の挟撃を食らうことになるだろう。問題は、野田では当選できないと感じている若手議員らが離党して新党に合流する動きを見せるかどうかだ。しょせん「風」で当選してきた連中には、愛党心などはない。「昨日勤王、今日また佐幕」で、その日その日の風任せの連中が9人離党すれば、政局を直撃する。不信任案が成立する。そうなれば憲政の常道は解散だ。石原の打った球は、思わぬ効果を発揮する可能性があるある。しかし天下の大老害の「最後のご奉公」などは、もうしてくれなくていい。時代錯誤の上に悪女の深情けより悪い。 
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