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2012-09-26 00:45

領土問題の国際司法裁判所による解決は日本にとって有効か?

宮崎 厚  ベンチャー企業顧問
 日本政府は竹島問題などの法による解決を求めて、野田総理が国連で「法の支配」を訴える演説をするとの報道がありますが、その意味合いを政府は本当に理解しているのでしょうか。というのは、仮に国際司法裁判所に提訴しても、敗訴すれば、日本は竹島を手放さなければならなくなるからです。尖閣諸島問題も同じです。国際司法裁判所に訴えて中国を排除できる確実な見通しがあるならともかく、そうでなければ、軽軽な提訴は領土を失うことに通じます。裁判とは勝つ見込みがあって行うべきものですが、現状では「100%勝つ」とは限りません。法の解釈を第三者に預けてしまうことは外交の放棄であり、「危険極まりない」と思います。日本が領土問題に関して、今外交上やるべきことは、むしろつぎの3つだと思います。

 第一は、竹島、尖閣、北方領土について、歴史的にも、国際法的にも、それらが日本領土である根拠を、政府は内外に向けて説明すべきです。とくに相手国民に対して直接説明すべきです。中国などはおそらく閲覧禁止にするでしょうが、ネットなども十分利用して、対外広報を強化すべきです。日本のマスコミも、中国の反日デモを報道するのもよいけれども、日本のために日本の意見を広く内外に発信すべきです。外交交渉は、国のトップ同士が秘密裏に話し合うことも必要ですが、それだけに頼っていては埒があきません。とにかく日本の主張を世界に発信することだと思います。どうして日本外交は、相手に対して相手の主張が「間違っている」と言わないのか、不思議です。相手の間違えを指摘することは、相手を刺激することでも、争うことでもなく、相手に対する親切です。それこそ対等の関係です。

 第二は、第二次世界大戦後の世界では「軍事力による領土拡大は認めない」という原則が、国連憲章などで確立されたはずです。それが第二次世界大戦の反省と教訓から出てきた結論です。しかしながら、最近の中国の動きなどを見ていると、大昔の植民地主義や帝国主義の時代の覇権主義的行動をそのまま再現しているような気がします。日本は世界の現実を直視する賢い国でなければなりません。国連も重要ですが、常任理事国の5か国すべてが核保有国であっては、日本がいくら「非核」を唱えても、それが受け入れられるはずはありません。つまり、自国の主張を第三者である国際司法裁判所や国連安全保障理事会に預けて、その結論に頼っているようでは、自国の主張を貫徹することはできません。

 第三は、最終的にはやはり日本国憲法の見直しが必要だと思います。特に第9条の改正が必要です。第9条改正の趣旨は、これを単純化すれば、「日本は島国であり、かつて大陸に領土を求めたのは完全な過ちであった。今後、大陸に対する武力による領土要求は永遠に行わない」ということだと思います。言い換えれば、「島国日本は、島の防衛はする」ということです。日米同盟は重要ですが、いくら同盟国であっても、日本の施設が何もなく、日本人が誰もおらず、日本人が何もしないところに、島を取られたからといって、取り返しに行ってくれる同盟国はありません。そんな状況下で米国が動くはずがありません。自国のことは自国で判断し、行動し、そのあとで協力を要請するのが、同盟というものの筋道だと思います。その出発点は「正義は我にあり」と信じたら、堂々と反論することです。日本国内のいじめ問題のように、いじめられたからといって、先生に相談するだけでは、「君さえ我慢すれば、すべてが治まる」と言われかねません。日本外交をそのようにしたくはありません。
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