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2012-09-17 01:29

尖閣問題:野田総理の国連総会演説に向けて

北原 二郎  会社員
 野田総理が、今月末の国連総会の場で領土問題を巡り「法の支配」の重要性を訴える演説を行う方向であるとのこと。拙稿で予てより訴えてきた国際世論に訴える言論戦につながる動きとして、評価されよう。尖閣諸島を巡っては、「日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」という外務省見解により、日本外交は危機に有効に対処できず、すべて後手に回ってきた。「実効支配」といっても、陸上に構造物が無く、海上保安庁の巡視船が周辺海域を巡邏するのみでは、中国が海上に多数の漁船と監視船を送り込んで来た段階で、容易に崩壊しうる。敢て戦時中の言葉を使うなら、「制海権」を奪われるということになるだろう。中国が既に監視船の派遣などの強硬処置に出て、尖閣諸島を「獲り」に来ている状況の中、今回の総理の国連演説は、日本外交にとって大きな転換点となりうる。

 中国が1992年の「中華人民共和国領海及び接続水域法」に基づいて「法の支配」を主張して来ることも考えられるため、野田総理の演説は日本の国内法に加え、「国連海洋法条約」等の国際法上の根拠についても、言及する必要があるであろう。しかし、それだけで十分であろうか?私は(1)実効支配の強化、(2)国際司法裁判所の活用、(3)国際世論を味方につける言論戦、(4)日米同盟の立て直し、の4点を柱とした、重層的な国家戦略を組み、演説もそれに沿った内容とする必要があると考える。

(1)については東京都が求めていた陸上における港湾設備や灯台はもとより、ヘリポートの建築などの実効支配の強化が急務である。しかし、陸上への構造物設置は中国の反発と挑発、さらには経済制裁が予想される。1970年代以降に中国が始めた尖閣諸島への領土要求が、そこを中国領であると信じて疑わない13億人の民を生み出してしまったと言える。
(2)国際司法裁判所(ICJ)への提訴には(日中双方の同意が必要だが、どのタイミングで提案するのが最も効果的かについて、速やかに検討せねばならない。
(3)については、欧米のマスコミに加え、フィリピンやベトナムとも連携した宣伝活動(在米移民社会との関係構築)を展開すべきである。一方で、歴史家とも協力し、中国が領有の根拠としている琉球国への冊赴使による「使琉球録(1534年)」や「使琉球雑録(1686年)」、日本の林子世による「三国通覧図説(1786年)」などの研究と論理的な反証を用意すべきである。
(4)については、中国が米国債の最大の保有国であるという米中経済関係の現実に鑑みても、米国が日本の領有する尖閣の防衛義務を捨てて、中国への配慮を選ぶ可能性は排除できない(中国の週刊誌、新聞等の論調はまさにそこを突いている)。このように考えると、米軍への過剰な期待は禁物であるけれど、米国を取り込むための一層の努力は必須である。
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