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2012-09-07 23:05

(連載)あまりにも「2国間関係」でのみ捉えていないか(1)

高橋 敏哉  PhD Candidate (National Security College, ANU) (新潟大学講師)
 この夏より、縁あってオーストラリア国立大学(ANU)の国家安全保障カレッジ(National Security College) の博士課程(PhD)に在籍している。10年以上前にロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)の国際関係学部の博士課程に所属していたが、家庭の事情と指導教官の死去によりPhD を中断してしまっていた。その後、長い雌伏の時期が続いたが、オーストラリアの学術誌などに論文が採用されたことなどもあり、この歳になって、2回目の挑戦の機会を得ることになった。そして、酷暑の続く日本から、朝はマイナス4度まで下がる真冬のキャンベラの地にやってきた。

 国家安全保障カレッジは、2年前にANUとオーストラリア政府との共同プロジェクトとして設立された。冷戦後、そして21世紀に入り、安全保障問題は新しい分野の登場とその課題の拡大に伴い、世界的に認識が高まることになった。この世界的な流れの中で、いち早くオーストラリア政府は、国家安全保障問題の学術的発展、オーストラリア政府の上級官僚を対象とした国家安全保障専門家の育成、官民横断的な海外の安全保障の専門家とのネットワーク作りの拠点として、このカレッジをANUの中に設立した。学部や修士課程の構想はこれからであるが、昨年、博士課程の第1期生の募集があり、私は3名の内の1人として選ばれ、こちらに在籍することになった。後の2名はオーストラリア人なので、私が唯一の留学生である。現在は仮の建物2棟に分かれているが、10月にはANUキャンパス内の湖を望む丘の上に新しい建物が完成し、そちらに移る予定である。

 様々な新しい知見を発見できそうな環境であり、またオーストラリアというミドルパワーの国家の安全保障の在り方を知る貴重な機会でもあり、今後、この国家安全保障カレッジから感じた日本の安全保障問題、アジア太平洋地域の国際安全保障に関する印象を定期的にレポートしてみたい。若干、論文というよりは随想的なものになりそうで、貴フォーラムの投稿の質を落としてしまわないか、心配なのであるが、この地において肌で感じることや、ある種の直観的なものの中に、いくつかのヒントや真理が含まれているかもしれない、という希望的な観測の下で筆を取ってみたいと思う。この点、諸先輩方にお許しを頂ければと思う。

 7月31日にオーストラリアに来て、まさに真冬のキャンベラの地に降り立ったのであるが、まず一番に感じたことは中国人と韓国人の多さである。同じ北東アジア人の容姿をした人たち(特に若者)を多く見かけるのであるが、ほとんどが中国人、韓国人である。この地での寿司のスタンドや日本料理店は、実はほとんど全てが中国人、韓国人の経営であり、出てくるものも日本人からすると疑問符が付くものもないわけではない。唯一、やっと見つけた日本人経営のお店に、筆者はほぼ毎日お世話になっている。大型ショッピングセンターで日本風なパンを売る店、日本の和菓子の売店、マッサージの店、ネイルサロンなどもほぼ全て中国人の経営であり、店員も全て中国人の若者である。一方、ANUにおいても中国人留学生の存在感には圧倒されるものがある。ANUの中に立つ民間の最新の学生寮数棟に出入りする学生の多くは、中国人学生、韓国人学生であり、その下にある店も韓国食料品店と中国料理店である。日本人学生の存在感は至って薄く、実に寂しい限りである。大使館筋の情報によると、キャンベラの日本人(在留登録者)は500名ほどとのことで、元々会う機会は少ないのであろうが、街の中心で観光客としての日本人を見ることさえも稀である。(つづく)
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