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2012-09-01 15:12

「軍事力の後ろ盾なき領土交渉には限界がある」に啓発されて

北原 二郎  会社員
 8月26日付けの本欄への松井啓氏の投稿「軍事力の後ろ盾なき領土交渉には限界がある」には大いに啓発された。私なりに、意見をまとめてみたい。まず、竹島をめぐる問題であるが、松井氏の述べておられる通り、「韓国の大統領選が終了するなどして、事態が沈静化するのを冷静に待つ」というのが、最も現実的な対応であろう。

 次に、尖閣諸島については、恒久的施設の建設や漁船の避難所の建設などの実効支配強化の具体的な提案をなされており、賛成だ。ただ、こうした実効支配の強化に対しては、当然中国側から経済面・政治面・軍事面等の様々な面で圧力がかかってくるであろう。そのことは、中国が、2010年の尖閣諸島沖事件を巡ってレアアースの対日輸出制限などのなりふり構わぬ総力戦を仕掛けて来た点から見ても、明らかであろう。1979年にも、日本が実効支配強化のために行った仮設ヘリポート建設が、中国(および台湾)の抗議により中断(撤去)させられた、という前例もある。であればこそ、国際世論を味方につける努力とそのためには国際司法裁判所の活用も辞さないという姿勢を示し続けることが、実効支配の強化と並ぶ車の両輪なのではないか。これは私が、別稿「尖閣問題は時間との勝負、国際司法裁判所の活用も」で触れている通りである。

 中国は、ベトナムやフィリピンなど近隣諸国と領有権を争っているスプラトリー諸島(南沙諸島)およびパラセル諸島(西沙諸島)に対し、軍事力を背景に実効支配を強化し、飛行場建設まで終えている。さらに、本日の中国のウェブ(中国天気網)によれば、手続きが順調に進めば、本年10月には一般旅行者の渡航も認めるとのことである。なお、旅行者へのキャッチコピーは、「中国のモルディブ(中国馬爾代夫)」である。これも実効支配を巡る争いの実態であろう。日本外務省と政府は、測量の為の東京都の上陸さえも認めないというが、このような中国の実効支配強化の動きについては、どう考えているのであろうか。

 最後に、北方領土交渉であるが、日本政府の立場は「四島一括返還」であると承知しているが、「四島一括返還」以外の可能性も含め国内でおおいに議論して良いのではないだろうか。そのような国内での議論は、相手のある外交交渉において、いわば「手の内」を相手に見せることになり、対ロ交渉における日本の立場を弱体化させる、との考えのあることは承知しているが、松井氏の述べる「国民的合意」形成のためには、そのような議論が活性化されるべきである、と私には思える。いづれにしても、ここ数十年の間、これ程まで日本人の中で領土問題への意識が高まったことはないのではないか。そういう意味で、ぬるま湯につかって危うく「茹で蛙」になる寸前であった日本人に、国際社会の現実を見せつけてくれたのが昨今の出来事である。俄かに高まった国民の関心を捉え、この機会を有効に活用して、議論を大いに活性化させて行きたいものである。


 
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