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2012-08-24 06:42

対韓「能動外交」に転ずるチャンスだ

杉浦 正章  政治評論家
 明らかに韓国政府の出方には、日本側のかってない“強硬姿勢”に想定外の戸惑いと驚ろきとも言える反応が潜在している。韓国による首相・野田佳彦の親書の受取り拒否などという極端に礼を失した態度は、まるで戦争勃発直前の対応であり、憤りを通り越して、噴飯ものですらある。普段何を言っても怒らない日本が、「天皇侮辱発言」で血相を変えて怒った。しかも、かって祖国をじゅうりんし併合された相手である。「不気味な怖さ」や「気圧される」ようなものを感じているに違いない。今後の対応はそこを見極める必要がある。政府はこれを奇貨として、安易な妥協を排し、この際とっくに決着した歴史問題での不愉快な要求の繰り返しにもとどめを刺すところまでやるべきである。竹島問題は対韓「受動外交」から「能動外交」に転ずる絶好のチャンスである。まさか外務省が韓国外交官の外務省敷地内立ち入りを拒否するとは思わなかったであろう。親書を持ってきた外交官を門前払いしたのだ。韓国大統領府は「こんなことがあるのか」と驚がくしたと言うが、当たり前だ。日本を甘く見るのもいいかげんにした方がいい。

 いままで我慢を重ねてきた日本政府も、ついに堪忍袋の緒が切れたのだ。李明博の「天皇が韓国を訪問したいというなら、独立運動で亡くなった方たちを訪ねて、心から謝罪したらいい」という発言は、事実誤認に加えて、日本人の感情を強く逆なでするものであった。血迷った李は、その起こす結果をなめていたに違いない。加えて、こともあろうに一国のトップが出した親書の受け取りを拒否したのだ。親書が着く前に公電で内容を伝えるのが外交慣例だから、恐らく李以下その内容の強さに戸惑っていたに違いない。当然親書は、竹島の韓国名「独島」などは使わない。内容も日本の国際司法裁判所への提訴だ。受け取れば竹島が紛争地域であることを自ら認めることになる。「まずい」と思って、窮余の策で再び世論うけを狙った手段に出たに違いない。李はポピュリズムの泥沼にはまってしまったのだ。本来なら内容について反論の書簡を送るべき所を、それもしない。書簡の受け取り拒否などという行為は、湾岸戦争直前に米大統領・ブッシュの書簡をイラク大統領・フセインが受け取り拒否して以来のことだ。国交断絶や戦争に直結しかねない措置なのである。だから外務副大臣・山口壯が「子どものけんか以下の話だ」と批判するのも当然だ。

 さすがに温厚な野田も8月23日の予算委員会では怒った。天皇侮辱発言の「撤回と謝罪」を求める意向を表明、従来の「理解に苦しむ」から大きく踏み込んだ。外相・玄葉光一郎も初めて「竹島は韓国による不法占拠」と明言した。韓国報道官が撤回を求めているが、戦後のどさくさに紛れて夜盗のようにかすめ取ったのだから、これに応ずる必要など些かもない。財務相・安住淳もいったんはトーンダウンした「通貨スワップ」の融通措置について「韓国経済の安定に配慮してやってきたが、10月以降の取り決めは白紙で考えざるを得ない。総合的に考える」と時限措置の打ち切りに前向きの考えを示した。韓国国債購入の凍結も効果的だ。こうして、残暑の水銀柱の高止まりと同様に、日韓関係もテンションが上がって、高止まりしている状況に立ち至った。この際、日本政府に言いたいのは「もういいかげんに従軍慰安婦問題が象徴する韓国の“妄言”に耳を貸し続けることはやめよ」ということだ。第2次大戦は遙かに遠い昔のこととなり、世代は様変わりした。現在の日本を支える世代にとっては、言いがかりもよいところであろう。ことあるごとに「謝れ」「補償せよ」と、まるでやくざの“ゆすり”や“たかり”のように過去の歴史問題を繰り返す。韓国政府は若い世代にも“刷り込み教育”がしてあるから、李のようにいつでも火をつけられる状況になっているが、日本の場合、若い世代ははっきり言って「難癖」としか受けとっていない。

 この不満が新たな「反韓ナショナリズム」へと発展してゆく可能性があり、韓国に対して反感と憎悪のいつか来た道をたどりかねない。賠償問題は法的には日韓基本条約で完全に解決し、政治的には大統領・金大中来日の際の首相・小渕恵三の文書による謝罪で決着済みの問題なのだ。物分かりのよい態度は、かえって相手に誤解を与える。しかし、この問題は李明博が大統領の座にある間は、解決の必要もないし、李の態度から言って和解に応ずることもあるまい。しょせんレームダックの李は相手にせず、むしろ徹底した国際的な宣伝戦を展開して、韓国を追い詰めるべきだろう。このさい日本も、洗いざらい本音をぶちまけた方がいい。一方で、2月の韓国大統領選挙の最有力候補とみられている与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)に接近すべきだろう。それにつけても、一昔前まではこういうときに日韓議員連盟の大物が議員外交を展開して、事態の収拾に役立ったものだが、それがとんとなくなった。小選挙区制導入で議員が小粒になり、選挙にプラスにならない外交で活躍する者もいなくなったのだ。対米外交しかりである。亡国の選挙制度は早く中選挙区制に戻すべきだ。自民党も29日から国会を空転させる方針を改めるべきだ。この国難の時期に国会を止めれば、党利党略の批判を受ける。問責決議は会期末ぎりぎりの段階で十分効果を発揮できる。
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