国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-08-19 20:08

領土問題は、初等中等教育学校でしっかりと教育すべき

金子 弘  日本学習社会学会会員
 韓国大統領の竹島への上陸に続き、香港系中国人が尖閣諸島へ不法上陸するなど、日本の外交、防衛のあり方が問われ、様々な主張がなされているが、このような事態を招くに至った本質をとらえた主張は乏しいように思われる。問われている問題の本質は、日本人自身の領土問題に対する考え方であるからだ。そして、そのような日本人の考え方は、初等中等教育学校において、我が国の領土である竹島や尖閣諸島について、どのような指導が行われているかによるのである。

 初等中等教育学校では学習指導要領に沿ってつくられた教科書を使って指導がなされている。教科書を使って教える教員には、指導書ともいうべき「学習指導要領解説」が用意されているが、これは学識経験者、教員、各教科の専門家の協力を得て文部科学省が作成、編集するものである。この「学習指導要領解説」(平成20年7月版)の中学校社会科編を見ると、「我が国が正当に主張している立場に基づいて、当面する領土問題や経済水域の問題などに着目させたりすることも大切である。(中略)我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である」とされている。そして、高等学校地理歴史科編(平成21年12月版)においては、「我が国が当面する領土問題については、中学校における学習を踏まえ、我が国が正当に主張している立場に基づいて的確に扱い、領土問題について理解を深めさせることが必要である」とされている。

 こうしたことから、竹島については「我が国の領土でありながら、現実には韓国によって不法占拠されている」といった領土問題として指導すべきことが明確に示されているといえる。尖閣諸島については、「領土問題は存在しない」という政府の統一見解があり、沖縄返還の際に南西諸島の一部として返還されていることを踏まえれば、「学習指導要領解説」には例示されていなくても、我が国の領土として理解させる必要があることは明らかであるといえよう。

 こうした一方で、「学習指導要領解説」の小学校社会科編、中学校社会科編、高等学校地理歴史科編において「国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な資質を養う」としていることから、初等中等教育学校において、尖閣諸島に関して中国が領有権を主張している背景や竹島が韓国との間で領土問題となっている背景には、海洋資源等の経済的なものが伏線となっているという物事の本質をきちんと理解させるべきであるといえる。また、アメリカ・ニュージャージー州の日本人学校で使用していた教科書が、偏向教育だとして韓国系米国人が訴訟を起しており、東アジアでの領土問題がグローバル的な拡がりを見せていることも認識しておくべきであろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム