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2012-08-03 14:27

原発依存度の決定を急ぐな

角田 勝彦  団体役員
 政府事故調の報告が出て、7月下旬に福島第一原発事故に関する4つの報告が出揃った。原因を天災とする東電の報告は別だが、政府・国会・民間の事故調は人災との点で一致している。しかし管前首相を含む関係者の責任を問うことより、事故再発を防ぐための科学的知見を高めることのほうが重要である。とくに事故原因について「1号機の地震による損傷の可能性は否定できない」との国会事故調の指摘に対し、政府事故調が「津波到達までに原子炉の閉じ込め機能を損なう損傷はなかったと考えるのが自然」としているのは解明を要しよう。事故原因と見られてきた津波による全交流電源喪失がなくとも、大地震により原発が損傷する可能性があるのなら、大地震の可能性も検討した後踏み切った由の大飯原発の再稼動はともかくとして、2030年の電源構成(とくに原発比率)について予定の8月中に結論を出すのは拙速と非難されよう。新設される原子力規制委員会による科学的判断をまずは最大限尊重すベきであろう。

 これまで8月下旬の政府エネルギー・環境会議で、0%、15%、20~25%の三つの選択肢のうちからひとつに決定が予定されていた2030年時点の原発依存度について、政府はこれまでの意見聴取会に加え8月4・5両日都内で「討論型世論調査(DP)」を行い慎重に民意を探る方針と伝えられる。 一見、民意は明らかである。原発の再稼働に反対する首相官邸前での金曜夜の抗議行動には最近数万人が集まっている。鳩山元首相の参加もあった。野田首相は関係市民団体代表と近く面会する由である。抗議行動は各地でも広がりをみせている。28日福島市で始まった原水爆禁止世界大会は脱原発を訴えた。同じ日東京で日本版「緑の党」の設立総会が開かれた。小沢新党も反増税とともに脱原発をスローガンにしている。なお検察当局は8月1日、東京電力福島第1原発事故に関し国や東電側に刑事責任があるとして、業務上過失致死傷容疑などで各地検に提出された告訴・告発状を受理した。

 しかし民意は脱原発(依存)一辺倒とは言えない。7月27~29日の日経・テレビ東京共同世論調査では、再稼動に関し「最低限にとどめるべきだ」が49%、次いで「すべての原発を停止すべきだ」が27%、「安全確認ができたものから順次再稼動すべきだ」の19%の順だった。東日本大震災一年の日本世論調査会全国面接世論調査では「電力需給に応じ必要分だけ再稼働を認める」が54%で、短期的には現実的な対応もやむを得ないとする姿が浮かんだのと同趣旨だろう。

 もっと重要なのは、9月上旬発足が予定されている原子力規制委員会をめぐる動きである。委員長候補である田中俊一氏は8月1日国会で、大飯原発も「活断層があれば当然止めていただく」と明言した。原発再稼働の判断基準については「規制委で慎重に確認・評価する必要がある。これまで技術的な点で精査が不十分だった可能性がある」と述べた。最終判断は総選挙にゆだねるほかないだろうが、原子力規制委員会による科学的判断は将来最大限尊重すベきであろう。
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