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2012-08-02 18:04

(連載)シェールガスとシェールオイルによるエネルギー大革命(1)

藤井 厳喜  ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
 近年、シェールガスとシェールオイルという全く新しいタイプの天然ガスと石油が世界中で大量に発見されています。この為、国際的なエネルギー状況は革命的に変化しました。一言で言えば、安い石油と天然ガスが大量に供給される時代が始まったのです。現在の技術で、しかも、現在の価格帯で生産する事の出来る天然ガスは約400年分、石油は約200年あることがほぼ確実に分かっています。これらの天然ガスと石油の生産コストは極めて安く、加えて、これらのエネルギー源は、先進国内にも大量に埋蔵されている事が分かっています。この7月、日本でも、秋田県でシェールオイル油田が発見され(鮎川油ガス田)、その採掘が急がれています。

 このエネルギー情勢の革命的な変化により、日本では、原子力発電を大幅に削減ないし全廃しても、不安のない状況が生まれています。とりあえず、安全性に最大の重点を置きながら、原子力発電を削減しても、これを完全に補えるエネルギー状況となってきました。電力供給に限って言えば、今後の世界の主流は、天然ガスを燃料とするガスタービン・コンバインド・サイクル(GTCC)による発電となりつつあります。しかも、このGTCCは、日本の重電メーカーの独擅場となっています。

 このエネルギー革命がもたらす政治的かつ経済的変化には実に大きなものがあります。アメリカ国内のエネルギー生産が増大する為、アメリカの経常収支は改善します。これは、世界の基軸通貨のドルの寿命をより長期化する事に役立つでしょう。また、アメリカのエネルギー自立度が高まる事は、アメリカの中東に対する外交的干渉へのインセンティブが著しく低下する事をも意味するでしょう。イスラエルにおいても、サウジアラビア並みのシェールオイルが発見され、同国のアラブ諸国やイランに対する外交的立場を著しく強化しつつあります。

 エネルギー大革命の先端を切ったのは、シェールガス(Shale Gas)でした。シェールとは、頁岩(けつがん)の事です。この頁岩という堆積岩層に含まれている天然ガスの事をシェールガスと言います。従来から、シェールガスが存在すること自体は知られていましたが、開発・生産コストが高すぎる為、実用化されてきませんでした。ところが、アメリカの中堅エネルギー企業が、これまでの油田開発などで培った水平掘削、水圧破砕、三次元探査、マイクロセンシング(微細探査)などの既存技術を組み合わせて、シェールガスの商業開発に成功したのです。21世紀に入ったばかりの頃には、シェールガスの生産コストは100万BTU(英熱量単位)あたり200ドル以上でしたが、技術革新の結果、シェールガスの生産コストは100万BTUあたり2ドルから2.5ドルにまで、劇的に低下しました。米国のシェールガス生産が本格化したのは2006年からです。米国の天然ガス生産量は、2005年を大底に、今やうなぎのぼりに急増しています。(つづく)
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