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2012-06-28 06:58

世論は「小沢新党に期待しない」が78~79%

杉浦 正章  政治評論家
 「これでは小沢について離党する衆院議員は40台を維持できるかどうかだ」との見方が永田町で出始めた。どう見ても袋小路なのである。民主党元代表・小沢一郎が最後の頼みの綱とする「国民の皆様」の「小沢新党」支持率は、朝日も共同もたったの15%。さすがに散々だまされ続けて来ただけあって、国民の目も肥え始めた。「小沢新党」へ見事なアッパーカットと“冷水効果”を浴びせた形だ。「よしっ!」の小沢は、内心「ヤバッ!」の小沢になりつつある。このための苦肉の策か、6月28日付の読売のスクープによると、当面は離党・新党へとは動かないまま、国会内で反対票の43人で「民主党会派」を離脱して、新会派を結成する、という「奇策」まで浮上してきた。同紙によると「民主党に所属しながら『党中党』として野田首相や党執行部を揺さぶり、離党・新党結成の時期を見極める時間を確保できる利点もある」のだという。消費税政局の小沢戦略は、恐らく参議院議員時代から一貫して小沢一郎と行動を共にし、「小沢の知恵袋」と称される平野貞夫あたりの入れ知恵ではないかと言われている。最初は民主党の「少数与党化」をめざして54人の離党を目標に設定したが、これが実現困難と分かると方向転換。同じ民主党にとどまりながら別会派という「奇策」までひねり出した。

 このあたりは、議会の駆け引きに精通していないと出て来ないアイデアであろう。しかし、問題はこれらの策に共通しているのが「新党」を目指す“落ち目”の小沢を支える苦肉の策であることだ。大きな潮流の前に、アイデアはしょせんアイデア倒れになるのだ。まず小沢の大誤算は、国民がついて行かないことが判明したことだ。世論調査では軒並み小沢新党に「ノー」の反応である。それも「こてんぱんにノー」なのだ。28日付の朝日の調査では、新党について「期待する」は15%で、「期待しない」が78%と大きく上回った。共同の調査でも「期待しない」との回答が79.6%に上り、「期待する」は15.9%にとどまっている。これが意味するものは、選挙で「新党」は消滅しかねないということである。小沢は最近ことあるごとに「国民の皆様」を連発、総選挙を意識して有権者へのすり寄り姿勢を強めている。「大増税だけが先行することは、国民の皆様への背信行為」がその例だ。「消費税反対と反原発で勝てる」という判断だろうが、調査は逆に出たのだ。これではチルドレンも怖じ気づくだろう。

 おまけに資金調達がままならない。新党といえば1人1億が相場だ。それも新党で直ちに総選挙に突入するとなると、「現ナマ」が必要だ。衆人環視の中で小沢が調達できるか。分党すればそれなりの金は入るが、恐らく選挙には間に合わない。選挙で国会に出てきたときは、数が一ケタでは政党交付金もわずかだ。銀行から借りると言っても、裁判で公判中の刑事被告人に貸すだろうか。よほどの担保が必要だ。一時代前なら、奇特な財界人が現れたものだが、筆者と親しい兜町筋は「沈む泥船を支えるようなカネを計算高い財界人が出すかね」と述べている。カネが目当てのチルドレンらも後ずさりするところだろう。さらに数が問題だ。本会議の投票直後から筆者が指摘しているように、出てきた数字の実態は小沢にマイナスだ。「よしっ!」どころではないのだ。民主党の反対票57のうち小沢系は43票。後は鳩山系や中間派で、これらの票は「新党」へとはなびきにくい。おまけに43票といっても、「新党にはついて行けない」という議員が数人いると言われている。同盟からのチルドレンへの圧力も強い。そこでとりあえずまとめておこうというのが「別会派」構想なのだろう。

 こうした中で幹事長・輿石東は何とか小沢に救いの手をさしのべようとして懸命だ。28日に予定している小沢との会談でも「野田も除名しないと言っていますから」と言って、止めるのだろう。事実、どうも首相・野田佳彦も除名なしで固まったようだ。鳩山グループと中間派の離党を食い止めることを狙ってのことだ。輿石にとって小沢の振り上げたこぶしをいかにして降ろさせるかが、この場面のポイントなのだ。それでもグループの急進派は、明日にでも離党する構えを見せている。一方こうした民主党内の末期症状をはやし立てているのが、自民党だ。副総裁・大島理森が軽い処分に不服で「一体改革の3党合意の信頼が崩れた。民主党内の問題ではない。ケジメをつけないと今後の審議も議論もできない」とすごめば、国対委員長・岸田文彦は「造反は3党合意への造反だ。参院ですんなりと審議を進められない」と注文を付けている。しかし「自民党よ、おごるな」といいたい。野田以下執行部がいつ3党合意を破ったのか。造反を越える圧倒的な数が賛成に回っているではないか。これだけの大法案なら造反はどの時代でも出る。かって度々生じた自民党の内紛に社会党でもつけなかったような難癖をつけるべきではない。まるでやくざのいちゃもんだ。野田が「他党から言われる筋合いはない」と反発するのも、無理はない。それよりも異常に跳ね上がる山本一太が象徴する参院自民党の“突出”を押さえるのが先だ。まず自分の頭のハエを追えと言いたい。
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