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2012-05-17 16:44

(連載)フランス・ギリシャの選挙結果が物語るもの(1)

藤井 厳喜  ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
 5月6日、フランスで大統領選挙、ギリシャで国会選挙がありました。フランスでは野党とオランド候補が勝ち、ギリシャでは連立与党が敗北しました。両国では、有権者が従来の財政規律一辺倒の政策への反対の意思を明らかにしたのです。その前の4月21日には、オランダで、やはり緊縮財政への合意が得られなかったことから、連立内閣が崩壊しています。財政規律原理主義を押し通そうとするドイツと、それに反対するフランスとの間には、明らかな対立が生まれました。以前、行われたスペイン、ポルトガル、アイルランドの選挙においては、財政再建を公約した政権が誕生しました。

 しかし、フランス大統領選挙とギリシャ国会選挙では、有権者はこの処方箋を拒否したのです。オランダでも同様でした。その結果、5月8日時点の分析では、今後、ユーロが弱い通貨になることは、ほぼ確実です。EUの統一が乱れ、特に独仏間に亀裂が生じた為に、そして緊縮財政への反対がいくつかの国で表面化した為に、ユーロは今後、弱くならざるを得ません。相対的に言えば、円の独歩高が益々進むことになるでしょう。アメリカ経済も、順調な回復過程にあるとは言えません。非農業部門の就業者数の伸びが、4月に停滞したことから、景気回復を楽観視する人は減っています。結果として、アメリカは、所謂「QE3」へ踏み込まざるを得ないでしょう。

 ヨーロッパでも、様々な処方箋が検討されるでしょうが、ヨーロッパ版の量的緩和であるLTROの第3弾をやらざるを得なくなる可能性が濃厚です。そうすれば、ドルもユーロも益々弱くなるので、円がかつてない独歩高に追い込まれる事は確かです。最も、1ドル=75円に近付けば、日本の当局は市場介入するでしょうが、大きな市場の流れを押しとどめることは出来ないでしょう。フランスのオランド新大統領は、財政規律の確立に反対しているわけではありません。2013年の財政赤字目標は、GDPの3%以内に抑えると言っていますし、任期が満了する5年後の2017年には、財政均衡を達成する事を公約しています。

 但し、公共支出は、今後5年間で200億ユーロ拡大し、その為の増税は富裕層や企業に負担させる方針です。そして、今後5年間で、学校の教職員を6万人、警察官を5000人、新たに雇用すると言っています。オランド候補に言わせれば、財政規律の確立を目指しながらも、経済成長を促進する政策を取らなければならず、その為には、「大きな政府」も必要であるということです。メルケル独首相は、早くも「ユーロ圏の財政協定を見直すつもりはない」と、オランド新大統領の要求を拒絶する旨、発言しています。(つづく)
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