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2012-03-03 01:39

(連載)毛を吹いて疵を求めず(1)

角田 勝彦  団体役員
 名古屋市の河村たかし市長が中国南京市友好使節団との2月20日の会見で「南京大虐殺」への疑義を呈したことへの波紋が広がっている。今年は日中国交正常化40周年の年でもあり中央レベルでは冷静で、たとえば中国政府は懸案の日中韓首脳会談を5月13、14両日に北京で開催する方向で日韓両政府に打診している由であるが、「毛を吹いて疵を求める」の愚に陥らないよう、慎重な対応が望まれる。

 名古屋市の河村市長は、友好都市である南京市の中国共産党南京市委劉志偉常務委員ら訪日代表団に対し、2月20日午前の会見で「通常の戦闘行為はあったが、南京事件というのはなかったのではないか」と語った。これに対し、同日、中国外務省洪副報道局長は不快感を示し「南京大虐殺には動かぬ証拠がある」と強調したものの、反応は冷静であった。しかしネット世論の攻撃が強く、22日より、北京を含み各紙も一面トップで報じるに至った。 南京市はこの発言を機に「交流の一時停止」を決定し、愛知県と友好提携を結んでいる中国・江蘇省は省内の政府職員に愛知県への渡航を禁止する内部通達を出した由である。

 3月1日には南京市で9日から開催予定だった日中共催イベント「南京ジャパンウイーク2012」(名古屋を拠点に活躍する人気アイドルグループ「SKE48」のコンサートが目玉)の延期が決まった。南京市の要請により、「中日友好南京柔道館」が3月2日に予定していた開館2周年記念行事も中止された。 河村市長は当初は静観する構えだったが、24日に中国主要メディアで報道された頃から戸惑いをみせ、「名古屋市役所を表敬訪問した南京市幹部に自分の意見を話したのは礼儀を欠いた行為だった」と述べた由であるが、27日の定例記者会見では「30万人もの非武装の市民を日本軍が大虐殺したことはない。撤回はしない」と従来の持論を繰り返した。

 なお同市長は20日の会見で南京市側に南京事件についての討論会の開催を申し入れていたが、真意を中国側に伝えるため、駐日中国大使に面会を求める考えも示した。日本政府は、旧日本軍の南京入城の後、非戦闘員の殺害、もしくは略奪行為などがあったことは否定できないとしつつ、本件は名古屋市と南京市という地方自治体間の間で適切に処理・解決されていくという問題であり、可能な限り早く解決されることを期待している(24日付外務報道官会見)としている。95年に村山富市首相(当時)が植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」を踏襲する立場も強調している。(つづく)
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