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2012-01-06 01:44

(連載)日本核武装の是非(1)

河東 哲夫  元外交官
 前から気になっていて、まさかと思っていたが、僕の主宰しているブログ、www.japan-world-trends.com に1click投票という欄があって、その「結果を見る」という個所をクリックしてみればわかるのだが、今後の日本の安全保障戦略として、中立を選択する人が実に全体の57%強に達している。そして、そのうち「核兵器を持った上で中立路線をとるべし」とする人が21.5%もいるのだ。僕などがかねがね支持してきた、「日米同盟を基礎として中国とも友好関係」という行き方は、もう24.3%の支持しか得ていない。

 イラク戦争が強めた米国への反発、金融恐慌による米国の弱体化が、このような状況にまで日本世論を持ってきたのかと思う。日本国内はがたがたなのに。まず「中立」を選んだ人たちのことだが、周りの情勢があまりに厳しすぎるから、「そっと放っておいてもらいたい」という気持ちが強いのだろう。そして実際には日本の大きさと力では、完全な中立とか自立が無理なこともわかっているのではないか。今の自衛隊の兵力のまま「自立」したとすると、おそらく米国、中国、ロシアとこぞって日本の港を自国海軍のために使わせろと言ってきて、日本国内は大騒ぎの末、横須賀は米国、長崎は中国、のような割り振りをすることになりかねない。

 経済面でもTPPなどやめて半分鎖国でもしたいのだろうが、それは自分たちの生活水準の多くは、輸出があるからこそ維持されていることを忘れてしまっているのである。輸出が減れば円の価値が下がり、それは日本国内でインフレを起こす。では、通常兵力を充実させれば自立できるかというと、それにも限界がある。核兵器で威嚇されたらお終いだからだ。だから、「核を持ったうえで中立」を選んだ人は、その点を考えているのだろう。

 日本が核を持っていないことは、例えば村田良平・故元外務事務次官も問題視していて、その「村田良平回想録」の中で種々のやり方を論じている。「回想録」下巻の318頁以下には次の大胆な言葉が続く(一部はしょってある)。「私は、かねてから何らかの『引き金の共通化』の方式はありえないかと考えてきた(注:これは村田元次官が大使も務めたドイツが採用しているやり方。短距離発射の核爆弾に対して、ドイツ政府はNATOのアメリカ人司令官と発射決定権をシェアしているのである)。核ミサイル装備の潜水艦で、米海軍と海上自衛隊の要員が共に乗員となっていて、基国から日本に対して核攻撃が行われた際には、日本の要員が米国製の核ミサイルを報復として発射するというシステム」(注:要するに米国の「核の傘」の下にいるだけでは、本当に有事に傘を開いてくれるかわからないので、日本人が同乗して傘を本当に開いてもらう、ということ)(つづく)
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