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2011-12-28 17:57

大阪維新の会は教育基本条例案を断念せよ

角田 勝彦  団体役員
 朝日新聞によれば、東日本大震災の影響で、岩手、宮城両県の公立小・中学校計25校が、近隣校との統廃合を決めたり検討したりしている。もともと少子化の進展もあり、しょうがないのであろうが、南浅草にあった母校の小学校が創立124年で廃校になったとき私が感じた空虚感はまだ胸に残っている。まことに教育は人々の精神を左右する国の大事である。論じたいのは、大阪市の橋下徹新市長と大阪維新の会が、先の大阪ダブル選で公約した教育基本条例案である。根幹は「知事が教育目標を設定する」とした部分で、こんなことが認められるなら各県毎に別々の教育目標が設定されたり知事の交代があれば別の教育目標が設定される可能性が生じることになる。そもそも教育目標は、法律や政令の下位に置かれる条例で定められる事柄ではなかろう。

 文科省の見解は明らかである。2011年9月、橋下徹大阪府知事率いる維新の会が府議会に本条例案を議員提案した際、府教委幹部は「条例案の適法性に疑問がある」として、文科省に見解を求めた。同省は内閣法制局とも協議し、12月5日、府教委に回答したが、その中で教育委員会と首長の職務権限を規定した地方教育行政法の趣旨に触れ、「教育に中立性、安定性が求められることから、首長から独立した合議制の機関である教育委員会が教育事務の大部分を担うこととしたもの」と強調し、その上で、教育委員会が所管する学校の教育目標設定については「法に定めた首長の職務権限に属さず、法の規定範囲を超えて知事が規則制定することはできない」とした。

 すなわち本条例案は「法に抵触」していると見たのである。政府も12月16日の閣議で同様の答弁書を決定した。しかるに橋下徹新市長は、「従う必要はない」と反発し、19日の就任記者会見で「文科省に任せていたら日本の教育はぼろぼろになる。いまの教育委員会制度でいいのかと聞きたい」と批判した。21日、中川正春文部科学相と文科省で会談した際も折り合いは付かなかった模様である。

 本条例案には、日本ペンクラブも別の視点から反対している。すなわち、9月に維新の会が府議会議長に提出した教育、職員両基本条例案について、26日に、両条例が成立すれば「職務命令に3回従わなかったり、勤務評定が2年連続して悪かった教職員をほぼ機械的に免職できる」と指摘した。教育条例案の狙いについては「知事が教育目標を定め、教育委員会―校長―教職員を序列化し、外れると見なした教職員を排除することだ」と批判した。私はプラトンに倣い、民主主義の衆愚政治化と僣主政治への移行を危惧している。大阪ダブル選における市民の選択を論じるつもりはないが、橋下徹新市長が「従う必要はない」というのは傲慢暴戻であろう。教育基本条例案は素直に撤回すべきである。
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