国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-12-20 15:35

(連載)接近拒否ミサイルのグローバルな拡散に対処せよ!(2)

河村 洋  ニュー・グローバル・アメリカ代表
 中国は現在、射程距離射程距離が1,500から2,700kmになる対艦ミサイルを保有していると見られており、それは西側の空母艦載戦闘機の作戦行動半径を上回っている。技術的に言えば、西側海軍はフォークランド戦争から実戦の教訓を学べるかも知れない。イギリス海軍はアルゼンチンが発射するフランス製のエグゾセ対艦ミサイルの射程内で戦った。問題は戦争遂行の能力だけでなく心理的な側面もある。

 海軍艦艇がよりハイテク装備になるにおよんで、戦闘による艦艇損失のコストは跳ね上がった。そのために西側海軍はより慎重にならざるを得ない。よって専制国家による「無言のモンロー・ドクトリン」の脅威はきわめて大きい。ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、自らの著書”Dangerous Nation”で「モンロー・ドクトリンは防御より攻勢の性質が強い。それは西半球におけるアメリカの拡張を正当化するものだ」と述べている。

 京都大学の中西輝政教授は自らの著書『大英帝国衰亡史』で「19世紀末までイギリスの指導者層にとってモンロー・ドクトリンはあまりにヤンキー的で、とても受け入れようがないほど珍奇なものであった」と論評している。ドイツの台頭がイギリスの覇権を脅かすようになって初めて、ソールズベリー侯爵はそれを受け入れるにいたった。ソールズベリー卿はあの有名な日英同盟を成立させた首相であり、ビクトリア朝時代以後の国際的な力のバランスの変化に対応していった。歴史は専制諸国家が好き放題に「無言のモンロー・ドクトリン」を振りかざすようになることがどれほど危険かを示唆している。

 よって、こうした国々の接近拒否能力を無力化する戦略を模索することが差し迫った重要性を持つようになったので、そうした兵器から世界中にある我々のシーレーンを守らねばならない。原子力潜水艦から対艦ミサイル基地へのトマホーク・ミサイル攻撃も、そうした戦略の一つである。中国とその他の専制諸国が「海洋を占拠する」ような事態を許してはならない。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム