国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-10-31 23:54

政府・日銀の為替介入に寄せて

宮崎 厚  ベンチャー企業顧問
 10月31日午前10時半過ぎに、政府・日銀が為替介入したようですが、これに関して私見を申し上げます。

 何故、真昼間の東京市場に一度に介入したのか疑問です。私なら、夕方、東京市場が閉じた後、欧州市場からロンドン、そしてニューヨークと反時計回りに介入してゆきます。そうすると、介入資金量も少なくて翌日の東京市場へ与える影響は大きくなり、介入はより効果的になると思います。一時にいきなり3円もの円安を起こすより、相場というものは1分、5分ごとに必ず上下するものであり、円安に振れたときは一層ドルを買って煽り、円高の時には円売りで抑え、小出しにしながらジグザグで円安へ誘導してゆく方が、より効果的で、介入資金も少なくて済むのではないでしょうか。

 今回のように、政府が東京市場に露骨に瞬間介入すると、今後他国から非難を受ける可能性が高く、他国の為替管理に抗議できなくなる可能性があります。介入するのであれば、総合的金融財政政策の一環として継続可能な、政策的権威を保って対応するべきであると思います。安住財務相が、「為替の投機的な動きに対しては断固とした対応をする」、「納得いくまで介入する」などと発言し、また先般はG7で消費税引き上げについて海外で言及していますが、財務省は、本当に国際経済の生の動きを見ているのでしょうか。

 私の解釈では、米国は、金融錬金術に乗った消費力で世界経済の中心であった政策を転換し、ヘッジファンドや投機筋にはしっかり規制を掛けて抑えながら、実体経済、輸出振興によってハードソフトを問わず供給力によって世界市場に打って出る方向に転換しています。そのためにトレンド的なドル安誘導政策が行われています。そんな時に、かつてのはやり言葉で「投機、投機」といっても、表向きだけの発言ならともかく、本気であれば的を外しています。
 
 また、株式、債券金利、商品相場などいろいろありますが、私の経験では、為替相場ほど予想し難いものはありません。現に円の需要が高くて円高と言っても、果たしてその犯人と想定する投機筋は手にした円を何に使っているのかわかりません。経済の複雑な相互関係の調和や均衡の中で、あるべき水準などは無く、為替水準は結果であると思います。日本経済が上手く回れば、それが納得する水準です。

 いずれにしても政府・日銀は、決して上手なやり方とは思えませんが、一方では為替介入で一応円安誘導を目指し、他方国内政策の増税を世界に約束して、日本経済を消費や需要喚起ではなく、輸出はしたくても輸入はしたくないと言った自己完結的に仕向けることは、国際経済的観点からは矛盾だらけです。もはや経済外交とは、世界情勢に対する読みや潮目を見定めて、先行して進めなければ世界に力負けしてしまいます。為替介入にしても、タイミングを失せず大胆に行動する必要があり、その結果も瞬間的効果よりも持続するものであるよう、介入方法について一層工夫する必要があると思います。これらは日本の政策当局に、世界と渡り合う国際感覚と技量と能力があるかどうか、今、我々国民が問いかけているのです。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム