国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-10-17 10:23

(連載)TPP交渉への参加表明を恐れるな(1)

角田 勝彦  団体役員
 環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加をめぐる論議が激しくなっている。農業関係者などの反対は強いが、米国の対応を見ても、交渉への参加は即TPP(とくに例外なき自由化・関税撤廃の原則)参加を意味しない。民主党は、党内融和を最優先にしてきた野田首相がようやく行った決断を尊重し、11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、我が国のTPPへの交渉参加を表明することを受け入れるべきだろう。

 政府は10月11日、野田政権発足後初めてとなる経済連携に関する閣僚会合を首相官邸で開き、TPP交渉参加問題に対する協議を本格化させた(すなわちTPPは当初予定されていたのと異なり「国家戦略会議」外で協議されることになった。民主党にはTPP問題を扱うプロジェクトチームもある)。会合では意見が分かれ、国民に対しTPP交渉に関する情報をできるだけ示すことが確認された。TPPには閣内や与党内でも反対論が多い。議員連盟「TPPを慎重に考える会」会長を務める民主党の山田正彦前農相は、反対署名集めが10月14日時点で192人に上ったとして「TPPを本当に強行するなら、党内は二分されてしまう」と党内の推進論を牽制した。

 TPPは 2006年の発効時のシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの四カ国に米国(2009年)や豪州などが加盟を表明し、九カ国で締結に向け交渉が進められている経済連携協定(EPA)である。農産物を含めて貿易自由化の例外を原則的に設けず、関税の100%撤廃を目指してルール作りを進めている。つまり、自由貿易協定(FTA)の延長で、経済規模から見て米国との関係が中心となる。世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が 目標としていた年内の部分合意すら困難になった現在、EPAやFTAによる地域自由化の推進が図られるのは世界の趨勢であり、来年1月にも発効する見通しの米韓FTAもその一例である。ちなみに、発効から5年以内に、95%の物品で両国の関税はゼロとなり、オバマ政権は、その経済効果を、年間110億ドル(約8500億円)、7万人以上の雇用創出と見込んでいる由である。

 TPPは、米国にとり、このような直接的利益のみならず 世界経済の成長拠点であるアジア(その貿易量は1990年以降約3倍に急増)で米国が主導する経済圏を作り、影響力を強めつつある中国を牽制する政治的意味も持つ。参加は「親米経済圏」入りを意味しよう。米国は、自由貿易体制を強化し中国を牽制する上でも、日本の参加に強く期待している。米国は日本政府が5月日中韓首脳会談で日中間FTAに関する検討の前倒しで合意したほか、EUともEPA交渉に向けた予備交渉の早期開始で一致したことも気にしていたとされる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム