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2011-10-14 20:28

「国家戦略会議」でTPPを議論、一転、議論せず

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 野田総理は、国の重要政策を議論するため月内の発足を目指すものとして「国家戦略会議」(仮称)を位置付け、その中で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加問題を議論するとしていた。10月5日には、藤村官房長官がその旨、明言している。ところが、12日の記者会見で、藤村長官は、TPP交渉参加問題や「社会保障と税の一体改革」は同会議では議論しないと、180度転換した。そして、国家戦略会議では、エネルギーや環境などの中長期的課題を検討すると述べた。すなわち、国家戦略会議の位置づけを全く明確に出来ていなかったということである。

 TPP参加問題は、野田内閣に実行力ありやなしやのリトマス試験紙である。民主党内では「TPPを慎重に考える会」(会長=山田正彦前農相)が、TPPに対して大きな抵抗勢力となっているほか、党内でTPP関連の議論を行う「経済連携プロジェクトチーム」の座長が農協出身の鉢路吉雄前経産相であるという懸念材料がある。そればかりか、閣内でも鹿野農水相が慎重派である。野田総理本人はTPP参加に意欲的だが、国家戦略会議の迷走ぶりを見ると、全く心もとないという他はない。

 TPP参加が単なる通商問題ではなく、国家戦略の問題であるということは、少しずつではあるが浸透しつつあるように思われる。例えば10月6日付の読売新聞の社説は「TPP参加によって、日本や東南アジア各国、豪州などは、米国を基軸に経済的な連携を強化できる。それは、膨張する中国をけん制することにもつながろう」と、正確な認識を示している。日本のTPP参加を巡る迷走に業を煮やしたベトナムが、苦言を呈してきたことすらある。ベトナムはTPPに戦略的意義をよく理解しているのであろう。

 民主党政権は、「国家戦略」と名のつく機関を設置したがるが、なぜか、そこでは経済の話しか想定されていない。といって、安全保障そのものは、そういった機関での議論にはなじまない。TPPこそ、そうした機関での議論に適しているはずだが、今回のように腰砕けに終わる。ろくに詰めずに組織を作るという民主党政権の悪弊がまた出たとしかいいようがない。こうした積み重ねが政権担当能力への疑問を加速度的に高めていることを、なぜ民主党は理解できないのであろうか。
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