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2011-10-11 01:46

(連載)プーチン首相の「ユーラシア連合」構想と訪中(1)

河東 哲夫  元外交官
 今日、ロシアのプーチン首相が辛亥革命100周年を祝っている中国を公式訪問する。彼は9月24日、「何年も前から決めていたこと」として、メドベジェフ大統領を差し置いて自分が次の大統領選に出馬するのだと、言明したばかり。ロシア民衆は「密室政治」だと憤慨し、政治に透明性が欠如していることでは人後に落ちない中央アジア諸国においてすら揶揄されながらも、「他にましな政治家もいないので」ロシア人の大半は消去法で彼に投票することになるだろう。そしてプーチンは10月3日、かつてのソ連政府機関紙「イズベスチヤ」に「ユーラシアのための新しい統合計画」と題する論文を寄稿して、自分が大統領になったら「ユーラシア連合」を立ち上げるのだ、とぶち上げた。

 ロシアはベラルーシ、カザフスタンと関税同盟を立ち上げ、1年少し経ったばかり。これさえ多くの問題を引き起こしているというのに、プーチンはこれを2012年には「単一経済圏」なるものに昇格させて「超国家的機関を作り」、マクロ政策、独占禁止、基準認証などを調整させるのだそうだ。まあ、EU委員会あたりをモデルと見ているのだろうが、この(多分ロシア人主導の)「超国家的機関」は世界の極の一つになるのだそうだ。そして欧州とアジアの間の架け橋になってくれる・・・(注:自分のやりたいこと、できることが明確でない者は、有力者間の仲介をやりたがるものだ)

 ユーラシア連合というのは、関税同盟やこの「単一経済地域」などを統合して作る。そのような訳のわからない組織なら、既にCIS(旧ソ連諸国のうちバルト三国を除いて作った「新独立国家連合」)というものがあるではないかと思うのだが、プーチンの論文では両者は違うのだと言う。でもどこが違うのかは一向にわからない。

 この「民主主義と市場経済を奉じ、旧ソ連諸国だけでなくどの国も加盟でき、リスボンからウラジオストックまでをカバーする」というユーラシア連合だが、メドベジェフが大統領になったばかりの時打ち上げた「欧州安保構想」がバンクーバーからウラジオストックまでをカバーする気宇壮大なものだったのに比べると、経済面だけに集中し、かつ欧州と旧ソ連だけでまとまろうとして、日本はもちろんのこと米国、中国もろくに眼中にない。(つづく)
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