国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-09-07 18:52

(連載)野田新内閣の誕生と日本の未来(1)

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 9月2日、野田佳彦首相の内閣が発足した。9月1日、成田市で「国際社会とリスク」をテーマに講演会の講師を務めたが、その会場では「千葉県出身の総理として頑張ってほしい」との声が出ていた。千葉県の大学に勤務する身としてその声に共感するところはあるが、政策学をかじる身としては、8月30日付けのフィナンシャル・タイムズ紙の以下の指摘をしっかり受け止めたいと考えている。

 第1は、国民から支持を得てスタートしても、数か月すると国民は飽きる。そうなると、与党は次期選挙の重荷になると考え、その人物をお払い箱にしたいと感じて動き出す、との指摘である。第2は、官僚機構によって政府は運営されているが、大震災の復興、債務管理、デフレ対策、対中国政策といった大きな問題が先送りされ、誤魔化されている、との指摘である。おそらく、外国人ジャーナリストの多くは、現在の日本の姿としてこの2点を首肯するだろう。

 なぜなら、とりわけ欧米では、政治家を人気や地縁などの人間関係ではなく、問題を見出し、それを解決できる能力によって評価するからである。そこには、政治家が問われるのは、調整能力もさることながら、政策実現能力だとの考えが見えてくる。しかし、古賀茂明が『日本中枢の崩壊』『官僚の責任』で指摘しているように、東日本大震災と福島第一原発事故への対応ぶりを見て、多くの日本人が「官僚機構は日本で最高の頭脳集団である」とのこれまでの既成観念が幻想であったと再認識したのではないだろうか。

 上記の第2の指摘については、日本人と外国人ジャーナリストの現状認識に違いがあるように思う。この認識の違いはなぜ生まれるのだろうか。それは、外国人の中にも日本人の中にも、増分的な政策立案を続けることで、まだこの国の屋台骨は保たれると考える人がいるからではないだろうか。復興、債務管理、デフレ対策などの国家収入の問題や、社会保障の改善問題、「バラマキ4K」などの支出といった個別政策に関心が高いことからも、そのことが窺える。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム