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2011-06-30 09:57

(連載)「原発継続しなければコスト数兆円」という議論について(2)

西村 六善  元地球環境問題担当大使
 事情は違うが、米国では各州に公益事業委員会があり、コストの外部監査を厳しくやっている。発電所職員の給与は業界最低に抑えられており、随意契約は禁止されている。世界の電力会社で公開入札が義務付けられていないのは日本ぐらいだ、といわれている。また送配電は分離させて、企業間競争が生まれている。

 僅か4%エネルギー自給率を高めようとして国が努力してきた原子力政策は「躓いた」と言わざるを得ない。要するに、「国が進めてきたエネルギー・セキュリティー政策は破綻した」ということになる。もともと、高レベル廃棄物の処理に最終解決がついていない公共政策は、破綻せざるを得なかった。要するに、完結性のない巨大公共政策だった。原発推進が如何にプラスであっても、廃棄物の処理の一点で欠落があれば、公共政策としては「適性を欠いている」のではないのか?国は、そもそも見通しの段階で間違っていたし、従来型の「限定的で強権的な意見集約の下で推進する」という方法論でも間違った。

 今後は見通しの段階で誤らないようにし、同時に国民との綿密で融和的な協議の下で編み出さなければならない。国は頭ごなしに「こうだ」と決め付けるのではなく、従来とは全く違った発想で情報を全面的に開示して、国民の前向きなエネルギーが広汎に結集できるように、中立的な対話を生む必要がある。まさに国民が英知と努力を結集して、新しい日本を建設しようと決意している時に、「原発を「止めるなら、これだけ莫大なコストになるぞ」という単細胞的議論しか行われていないのは、国民を愚弄しているし、日本という国の成り立ちとしてもおかしい。情けない…

 国際競争に晒されている当の産業界が、この電力という最も基幹的商品の製造過程がこれ程の独占に占拠されていることに、声を上げようとしないことがおかしい。産業界はその競争力維持の為にも、この点こそ要求するべきなのだ。こういう状況が生まれて、初めて国民融和的な議論が始まり、「こういう改革を大胆に進めて行かない限り、電力産業だけでなく、日本経済の活力にも好ましくない」(伊藤元重教授。6月27日付け『読売新聞』一面)ということになる。(おわり)
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