国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-06-29 11:58

(連載)第1回「米中アジア・太平洋協議」と日本(2)

角田 勝彦  団体役員
 軍事面では、核弾頭数200~300と推定される中国は、既にロシアと並び米国に対し相互確証破壊(核ミサイル)の能力を持つ。その他の面でも、次期米国防長官に指名されたパネッタ中央情報局(CIA)長官は6月9日の上院軍事委員会の指名公聴会に提出した書面で、中国軍が台湾有事における米軍の介入を阻む能力の向上を進めているとし、動向を「注意深く監視し続けるべきだ」と証言した。また中国軍が「高度な武力衝突に短期間で勝利するための能力獲得を進めている」と指摘し、核戦力の近代化や宇宙、サイバー空間における攻撃能力の向上にも警戒感を示した。一方で、米中両軍間での関係強化に意欲も示した。

 米国には、党・政府による人民解放軍の統制が十分でないと見る向きもあり、7月にはマレン米統合参謀本部議長が訪中し、人民解放軍指導部とのパイプづくりを目指している。

 急激な軍拡でこのような力をつけてきた中国との軍事的対決は、米国にとり論外である。「誤解と誤算に基づく衝突リスク(クリントン国務長官)」も最小限にしなければならない。財政悪化で今後12年間に4000億ドルの国防支出圧縮を目指すオバマ政権として、最重要地域のアジア・太平洋のためにせよ、軍拡競争も避けたいところである。他方、南シナ海に関する中国の強硬姿勢(たとえば「核心的利益」であるとの主張)は、原則論からも、領有権を中国と争っている友好国との関係からも、受け入れ難い。対話強化が選択されるゆえんである。

 キャンベル次官補は、米国が「国益」と位置づける「航行の自由」などを念頭に「我々の指針となる戦略的な原則を再び強調した」と説明し、「すべての当事者間の対話を求めている」とも述べ、平和的解決の必要性を強調した。中国は「米国は当事国ではなく、介入する必要はない」と主張したとされるが、周辺国が対抗策をとったりすることにも鑑み、ベトナム海軍艦艇との合同巡視(6月19日から20日にかけベトナム・トンキン湾)なども行った。中国で国家政権転覆扇動罪に問われて服役していた著名な人権活動家、胡佳氏が6月26日未明に出所したのも、対米融和策の一環と見られる。中国も自制しているのである。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム