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2011-06-28 10:46

(連載)第1回「米中アジア・太平洋協議」と日本(1)

角田 勝彦  団体役員
 6月25日に第1回「米中アジア・太平洋協議」がホノルルで開かれたが、その報道では、南シナ海問題等での米中間の対立が強調されたが、米中関係の現在の基調は、対話の促進にある。日本は、菅首相の居座りを主因に外交でも停滞が目立つが、中国との関係では、諸懸案についての対話促進を通じて、友好関係の増進に努めるべきである。

 報道によれば、米国務省のキャンベル次官補(東アジア・太平洋担当)と中国外務省の崔天凱次官の長時間の協議では、焦点の南シナ海問題(中国がベトナムやフィリピン、マレーシアなどと諸島の領有権を争っている問題)等での米中の国益の対立が鮮明になったとされる。直前の6月21日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、クリントン米国務長官が、南シナ海での海洋進出を強める中国について「地域に緊張をもたらしている」と名指しで批判し、松本剛明外相も「中国は東シナ海、南シナ海で摩擦を生じさせている」と指摘したことから、日本国内でも中国脅威論が再浮上している。具体的問題として、たとえば日本最南端の沖ノ鳥島を含む海域への中国国家海洋局による調査船派遣が挙げられている。中国海軍の駆逐艦など11隻が6月上旬、沖縄本島と先島諸島の間を通り抜け、フィリピン東方沖の西太平洋で演習を実施したことも指摘されている。

 しかしながら、これで米中対立が激化すると見るべきではない。本協議は5月9~10日に開かれた第3回「米中戦略・経済対話」(同対話では双方の軍高官も交えた安保協議が初めて開かれた)で設置が決まった新しい枠組みである。アジア・太平洋地域の「平和と安定、繁栄」に向けた高級実務者レベルの意見交換を行って、両国間の信頼醸成を図るためのもので、始まったこと自体に意義がある。次回は、秋にも中国で行うことも決まった。昨年1月の米国の台湾への武器売却決定以来、断絶していた米中軍事交流も再開されている。7月にはバイデン副大統領が訪中し、答礼として次世代の最高指導者、習近平国家副主席が年内に訪米する。米中は対話加速へ向かっている。

 米国は中国を最重要国と見ている。6月9日発表の米国での日本外務省世論調査では、一般市民では「アジアでの米国の最重要パートナー」として中国を挙げた人が39%と最も多く、日本は2位の31%で、順位が初めて逆転した。経営者や学者など有識者の間でも、中国が46%、日本が28%と、昨年に続いて中国が1位だった。中国を選んだ理由では、一般市民・有識者とも「貿易・経済」が43%と最も多かった。(つづく)






 
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