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2011-06-14 10:12

(連載)早急に新しい原子力安全基準を策定せよ(2)

角田 勝彦  団体役員
 これに関し気がかりなのは、6月8日付米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』が、「G8のうち3か国の原子力担当高官が『IAEAは、福島事故に関する迅速で正確な情報提供に失敗し、天野事務局長は依然として日本政府の影響下にある』との懸念を持っていて、重要な国際会合での原発安全基準の策定議論から意図的な『天野外し』を行っている」と伝えたことである。とくにIAEAの報告書のうち日本の危機管理を「模範的」とした評価が、問題にされたという。確かに「模範的」とはいえないであろう。

 日本政府としては、地震多発国であることからも、いかなる科学的基準も受け入れるべきである。国際的な安全基準の策定は世界的流れである。ブダペスト近郊で開催されたアジア欧州会議(ASEM)の外相会合も、6月7日、福島第1原発事故を受け、原発の国際的な安全基準の策定と、世界の全原発の安全検査を求める議長声明を採択した。意図的な「天野外し」が行われたとの報道もあった6月7日のG20閣僚級会合「原子力安全に関する閣僚級セミナー」は、G8の路線を踏襲し、IAEAを最大限に「活用」して安全強化を図ることで一致している。次は6月20日から24日に予定される原子力安全に関するIAEA閣僚会議(さらに9月12~23日のIAEA理事会・総会)である。

 天野事務局長は、IAEA閣僚会議の主な目的として、(1)福島第1原発事故の初期評価(2)緊急時対応の強化(3)国際的な原子力安全体制見直しの着手、を挙げた。先に訪日したIAEA調査団や日本政府の報告書を基に、加盟国の閣僚や専門家がIAEAの機能強化や、津波や地震などに関する原発安全基準の見直しなどで意見を交換する。具体的な規制強化策という「各論」で、積極推進派から脱原発派まで、幅広い各国の利害が対立し、紛糾する可能性はあるもののIAEA重視の基本路線は踏襲されよう。我が国もこの方針に従い、早期に新安全基準の作成を行うべきである。

 なお、放射能垂れ流しについて、IAEA定例理事会は6月7日、福島第一原発事故で放射性物質が海に流出したことを受けて、アジア太平洋地域の海洋の放射性物質による汚染状況を監視する国際プロジェクトの実施を決めた。もちろん全面的協力が必要である。(おわり)
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