国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-04-14 12:42

菅首相よ、保身に惑わされることなかれ

松井 啓  日本大学非常勤講師
 私は3月23日の「百花斉放」で「福島原発の修復・再利用は不可能であり、即刻封鎖すべきである。さもないとチェルノビル事故と同様の事態に陥る」と警告し、同27日に再度封鎖の決断を促した。しかし、事故対処振りには全く緊張感が無く、汚染水排水溝におがくずや古新聞、更には入浴剤を投入するなど、小学生の工作実験のような手段で時間を浪費している。「対応が遅い」との内外からの批判が高まるや、原子力保安院は4月12日に至り福島原発の危険度を今までの5から7へ引上げる旨の発表をした。IAEAは「チェルノビルに比し、放射線量は1割程度」としているし、ロシアも「危険度7の発表は、炉心が爆発したチェルノビルとは局面が異なるので、過剰反応だ」としている。

 保安院は正確で信憑性のあるデータを発表する義務があるが、危険度の評価は、政府が一元的に決定するか、IAEAに委ねるべきではなかったか。原子力発電の安全に関する機構(内閣府原子力委員会、原子力安全委員会、経産省原子力安全・保安院、民間の東京電力)を一本化しない限り、国際的な不信を更に増幅させることになるだろう。

 中央指導部が、このような発表の国際的な影響を十分考慮していなかったことは、誠に残念である。これは、資源小国の日本だけではなく、仏、独、米、更に中、韓等アジア諸国の原発開発にも冷水を浴びせ、原発反対運動の火に油を注ぐこととなった。更に4月13日には菅首相自ら「福島原発半径20キロ以内には今後10~20年住めないだろう」と発言したことが、既に海外では大々的に報じられており、今更否定しても「日本産品は危険」と言う風評に追い風を与える結果になっている。

 民主党が政権の座に就いてから日本は迷走しているように見える。加えて地震・津波・原発事故の三重の惨禍は、不幸な試練ではあるが、これが日本の民主主義の現状であるのだから、我々は耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、恥じがたきを恥じて行くしかない。菅首相には、充分に国家的使命を認識して頂き、党派の利益、保身に惑わされることなく決断、指導、実行の組織を立て直し、この国難に対処するためには一命を投げ出すほどの覚悟を決めて頂きたい。結束の中核さえしっかりすれば、日本の再生は可能である。日本は「繁栄の徒花だった」としてこのまま埋没させてしまうのには、あまりにも・あまりにも美しい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム