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2011-03-17 18:59

大災害時の危機管理の3つの要諦

小沢 一彦  桜美林大学教授
 「1000年に一度」と言われる今回の東北関東大震災のような未曾有の災害では、先行事例や他国にも学ぶべき対策が少なく、とにかく冷静かつ慎重な対応をすることが不可欠です。ユダヤ人の格言の教えるように「危機管理とは、まずは最悪の事態を想定してから行動・対応する」ことです。危機管理には、3つの要諦があります。それを今回の大震災に即して述べてみたいと思います。

 1つ目は、喫緊の課題である福島第一原子力発電所の「メルトダウン」の冷却による防止と、その失敗時の対応策を同時に進めることです。今は犯人探しの時間はありません。現場で決死の覚悟で働かれているあらゆる作業者への支援こそが急務です。交代要員の大量確保で、長時間の暴露を防止。汚染されていない食糧、水などのヘリコプターでの投下。さらには、汚染者や車両の放射能除去洗浄です。専門家たちのわかりやすい情報公開があまりに少なすぎることが、救助の妨げになっております。仮に「メルトダウン」阻止に失敗したと判断した時には、見栄を張らずに、残念ですが、総員撤退避難です。逆に、政府は、欧米のように住民の安全を最優先し、最低80キロ圏外(欧米の放射能専門家の分析が根拠)への避難誘導を。直近では、パニックになりやすく「動けない交通弱者」もいるため、できる限り早めの誘導を。司令塔は、指揮系統を統一するためにも、あくまでも日本政府、そして地域ごとには各都道府県知事や市町村長です。

 2つ目は、大震災による被災者の救済と、余震への対応です。まだ大量の未救出のままの、孤立した被災者の一刻も早い救済を。報道では、燃料、食糧、飲料水、トイレ、毛布などが足りない所だらけです。また東北関東沿岸部の病院に医療機器や医薬品を大量搬送を。特に宮城県、岩手県、福島県が優先です。被災地域以外の輸送車は、燃料を満載して現場へ救済に。孤立した場所にはヘリコプターなどでの物資投下を。ただし、二次災害を避けるためにも、くれぐれも余震には十分な注意を。さらには、今後蔓延が予想されるあらゆる疫病対策や、汚染された水や食物、土壌にも十分な注意を。また電気のない地域を中心に、今後治安の大幅な悪化も予想されますので、警察の厳戒態勢や地域ごとの「自警団」の結成を。また振り込め詐欺の防止や、風評被害や、デマにも惑わされない理性、冷静さを常に持つことです。保身や組織の論理優先ではなく、住民の一刻も早い不安解消のためにも、正確な情報をタイムリーに発信を。

 3つ目は、長期的な日本経済復興への対応です。今は被害を最小限に抑え込む時期です。インフラの復旧を早期にし、救済への後方支援も。政府が司令塔の役割を明確にし、あらゆる物資の被災地への誘導を。また、不要不急の事業やイベントは全てキャンセルに。大規模停電の発生を含め、日本経済を長期に停滞させるという、「国家的危機」だとの意識がまだまだ足りません。工場生産の停滞、停電時の犯罪、交通通信インフラの混乱、そして交通事故などを防止することです。さらには、財政支援のためにも、全予算の項目ごとに数パーセントずつ削減し、それらを東日本の復興資金にあてるべきでは。完全な復興までには、数年はかかるでしょうが、まずは優先順位をつけての再興・再建計画を。くれぐれも毎回、同じ過ちを犯すことなく、現状や既存のままの立て直しではなく、新たな青写真のもとでの、災害に強い「コンパクトで安心安全な都市計画」による被災地の再興を実施すべきです。長年放置してきた、東京一極集中問題も再考すべき時です。

 阪神淡路大震災の教訓も生かされずに参りましたが、今回の教訓を糧に、今度こそリスク・ヘッジに心掛け、ニ度と同じ過ちを繰り返してはなりません。最後に、被災された方々、お亡くなりになられた方々には、心よりお悔みを申しあげます。とにかく日本国民、および海外の皆様の全面的な支援を願い上げます。
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