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2011-03-16 09:36

(連載)危機にあたり臨時増税より特別公債発行を (2)

角田 勝彦  団体役員
 気がかりなのは、この会談で菅首相と谷垣総裁が復興支援財源を確保するため、臨時増税の時限立法制定について、両党幹事長間で協議を進める方針で一致したと報じられることである。災害規模も復興に要する費用も未定のいま、復興支援財源確保の方法は決定できないが、景気と国民の士気に関わる問題として、方針決定には慎重さが望まれる。
 
 3月14日の東京株式市場の日経平均株価は、2008年のリーマンショック以来となる600円超の下げ幅となり1万円を割り込んで終了した。それも同日の日銀の追加金融緩和決定が伝わって下支えされた上でである。日銀が指摘したとおり、この大震災と付随する計画停電などにより「生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される」。この時期に臨時増税の時限立法制定を行うことは適当とは思われない。

 谷垣総裁は「国債発行だけで復興財源は賄えない。支援税制を『東北復興ニューディール政策』と位置付け、『何かやりたい』という国民の気持ちを一つにするべきだ」と提案し、菅首相も賛成した由である。筆者自身も、震源がもう少し南なら大津波の被害にあったかも知れない東京の住人として、節電に協力するくらいでこれまでのような平常通りの生活(いわば暖衣飽食)をしているのは申し訳なく、被災地のために「何かやりたい」とは思う。しかし、この際は、景気悪化につながると思われる臨時増税より、まずは予算の組み替え、次に景気浮揚につながる大型の(非赤字)公債発行を推薦したい。これは現在20兆円とされる需給ギャップを、大型公共投資などで埋める絶好の機会ともなろう。意図的に地域業者の活用(雇用増含む)を図ることも出来よう。

 これには、関東大震災のときの震災善後処理公債の前例がある。さらに当時は国内での消化が困難だったため、外債を著しく不利な条件で発行せざるを得なかったが、現在は、通常国債と別枠で多少の利子を付けるか、あるいは相続面での優遇措置を認めることにより、ちょうど振り替え先を探している高齢者中心の金融資産から投資させることは困難ではないだろう。利子による高齢者の収入増は、消費需要増にも結びつく。公共事業などの投資と消費増による実質GDPの増加は、将来的には税収増にも結びつき財政改善を果たすことも夢ではない。景気を腰折れさせる増税よりよほど現実的であろう。(おわり)
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