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2011-03-07 10:42

(連載)中東民主化は米主導西側同盟の望んできたこと(3)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 イランは中東での影響力拡大の機会を狙っているが、国内の騒乱にも直面している。グリーン運動の再来を恐れるシーア派神権体制は、野党指導者のミール・ホセイン・ムサビ氏とメフディ・カルビ氏を逮捕した。今やアメリカとEUがリビアと同様にイランにも制裁を強化しようとしている。ジョン・ボルトン元国連大使は「アメリカは、中東の民主化を支援するという正当な国益のためにも、イランの拡張主義を阻止すべきだ」と訴えている。事態は必ずしもイランに有利には動いていない。

 最近のリビアの混乱では、アメリカとNATOだけが国際警察軍として行動できることが明らかになった。欧米の介入に関して、カタールのブルッキングス・ドーハ・センターのイブラヒム・シャルキエ副所長は「リビア人にとっては何の問題もないはずだ。アラブ世界からの支持も得られるだろう」と述べている。イギリスのサー・リチャード・ダルトン元駐リビア大使によると、この国の内戦は国際的な人道軍事介入を考慮せねばならないほど深刻である。ロシアと中国は欧米の軍事介入に反対しているが、リビアはアラブ世界で孤立している。また、リビアの石油生産は短期間ならサウジアラビアなど他国で代替できる。ダルトン氏は「以上の2点が、欧米の人道的介入を受け容れやすくしている」と言う。

 中東の改革は、アメリカが長年にわたって追求してきたこともあり、カーネギー国際平和財団のミシェル・ダン上級研究員とブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、バラク・オバマ大統領とヒラリー・クリントン国務長官に宛てた書簡で、アメリカがエジプトの民主化に積極関与するように強く促した。さらにウィリアム・クリストル氏は「オバマ氏がアラブの民主化を支援すれば、私をはじめアメリカ国内でオバマ政権に批判的な者達も、大統領に敬意を抱くようになるだろう」と述べている。広くゆきわたっているイスラム宗教勢力への懸念に関しては、オランダのアヤーン・ヒルシ・アリ元国会議員が原理主義の台頭を否定している。エジプトの場合、ムスリム同胞団は、部族指導者、自由市場主義のリベラル派、社会主義者、過激派マルクス主義者、人権活動家までも抱合するイデオロギー的には多様な団体である。アリ氏は「民主主義を持続的なものにするためには、効果的な組織を作る必要がある」と指摘する。

 メディアはフェイスブック革命をドラマチックに報道するが、インターネットのソフトウェアはただの道具に過ぎない。フェイスブックやツイッターよりも、それを使う人の方がはるかに重要なのである。アメリカとヨーロッパの開発援助機関、シンクタンクそしてNGOが中東の市民のエンパワーメントに関わってきたことを見逃してはならない。この地域の住民の覚醒には、こうした関与が大きな支援となった。オバマ政権はそれを忘れてはならない。(おわり)
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