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2011-02-28 07:28

大物・側近の離反つづく菅

杉浦 正章  政治評論家
 民主党政権は八方ふさがりで、「四面楚歌(そか)」の状況にあるという。小沢一郎に近い参院議員会長・輿石東の会合で一致した認識だ。「四面楚歌」とは項羽を取り囲んだ劉邦の兵らが、項羽の生国楚の歌を歌ったことに由来する。項羽は愛馬「騅(すい)」が動かず、愛人虞(ぐ)美人を前に途方に暮れ「時に利あらず、騅逝かず、騅の逝かざる奈何(いかん)すべき、虞や虞や若(なんじ)を奈何せん」と嘆いた。まさに首相・菅直人の周りからは、人心が次々に離反し、愛馬ですら動かない状況に立ち至っている。項羽のように自刃の「総辞職」をするか、やぶれかぶれの「解散」に突入するか、今日2月28日から新年度予算案採決をめぐって土壇場の攻防に入る。

 輿石と元国対委員長・樽床伸二、元官房長官・平野博文、元参院幹事長・高嶋良充の25日夜の会合では、「6月解散、7月総選挙」説や「菅は辞任させるしかないが、ポストにしがみつくだろう」といった話で盛り上がったという。この席では、昨年輿石が「鳩山降ろし」に成功したことから、「菅降ろし」の鈴付け役を輿石に期待する空気が強かったという。このように小沢サイドが「菅降ろし」の“前哨戦”をやるのは勝手だが、いま起きている問題は、これまで菅を支えてきた大物たちの離反であろう。まず最初に“裏切り”とも、“菅離れ”とも言える動きを見せたのが代表代行・仙谷由人。官房長官時代は「弁慶役」をかってでて、一身に矢を浴びていたものだ。ところが今度は、15日に公明党国対委員長・漆原良夫とひそかに会い「菅の首と引き替えの予算関連法案処理」を打診した。断られて、後で「茶飲み話」とごまかしたが、茶飲み話で出来る話ではない。

 大物離反の第二弾は、重鎮・渡部恒三だ。記者団に「予算と予算関連法案を通すことを、民主党よりも、菅君よりも、何よりも最優先に考えなくてはならない」と述べたのだ。発言のポイントは言うまでもなく「菅君よりも、何よりも最優先」と述べた点だ。渡部は、とてもいま民主党が解散できる状況にないという判断であり、菅退陣で体制を刷新しなければ窮地からの脱出は不可能、とみているのだ。党のためには、菅を犠牲にするのもやむを得ない、という腹のようだ。離反第三弾は、とんちんかんの極みだが、国民新党代表・亀井静香だ。局面打開のため、与野党から幅広く閣僚を起用する「救国内閣」を菅に進言したのがきっかけだ。「第三次内閣改造をただちにやって、自民、公明、社民、在野にも手を突っ込むべきだ。救国を旗印に糾合をはかれ」と、いささか“誇大妄想癖”ともいえる主張を展開した。さすがの菅も、一か月で再改造の意味するところは自己否定に他ならないと瞬時に悟り、「それについては改めて話しましょう」と断った。亀井は「了見が狭いから駄目だ」と漏らし、不満を内攻させた。

 犬馬の労をとるべき側近も、まさに「騅逝かず」の状態だ。官房副長官・藤井裕久も、質問者が変わる度に、旧自由党時代の資金疑惑を突かれ、防戦に精一杯。頭に血がのぼって、とても冷静に官邸のまとめ役を演じているとは思えない。“財務職人”与謝野馨は野党の総スカンで、橋渡しどころではない。目玉人事の最年少官房長官・枝野幸男も兄貴分の“仙谷離反”の影響なのだろうか、どこかよそよそしい。子ども手当を小沢一郎が一挙に倍増させたことについて、菅が「小沢さんから聞いてびっくりした」と責任回避の問題答弁した翌日に、枝野は「私もびっくりした」と他人事のような発言。官房長官は菅の親衛隊長であるべきことなど忘れてしまっている。明らかに軽量長官でもある。

 古来落城間近ともなると、お膝元から離反の動きが出てくるものだが、菅の場合はこれからが籠城の正念場というときに、ぼろぼろ石垣の崩壊が始まってしまっているのだ。怒鳴りつけるから、側近もいきおい“面従腹背”となる。菅は28日で在任期間が266日となり、前首相・鳩山由紀夫と並ぶ。どう見ても、鳩山よりはましな首相だが、首相にも運不運がある。近来まれに見る激動政局に直面してしまったのは、運が悪いのだ。もちろん自らが招いて報いを受ける“自業自得”であることも確かだ。鳩山より在任期間がすこし長いことをもってよしとするしかないだろう。小沢一郎は27日「政治は一寸先は闇だ。どのように政局が動いていくか分からない。解散・総選挙が現実になる可能性も非常に大きい」と述べ、結構客観的な分析をした。
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