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2006-08-02 17:59

アメリカのイスラエル擁護を批判するべきだ

久保田 友紀  大学院生
 レバノン南部におけるイスラエル軍の攻撃で国連要員が死亡した事件により、国連安保理は議長声明を採択し、イスラエル軍の行為に「深い衝撃と悲しみ」を表明した。だが、議長声明にはアメリカの強い反対でイスラエルへの「非難」は盛り込まれておらず、また「即時停戦」の文言もない。アメリカのイスラエル擁護は今に始まったことではないが、日本はアメリカのイスラエル擁護を黙認してはならない。むしろアメリカの姿勢を批判するべきだ。

 7月4日の北朝鮮によるミサイル発射に対して、日本は率先して国連安保理に北朝鮮への非難決議採択を訴えた。最終的には日本も国連憲章第7章への言及を落とすという譲歩を迫られたが、全会一致での採択にこぎつけたことに、日本が強い姿勢を貫き、主導的役割を果たしたという評価も聞かれる。だが、今回のイスラエルに対する議長声明をめぐっては、日本の存在感はあまりにも薄い。確かに北朝鮮とイスラエルでは、地理的な距離感が脅威認識に影響を与えている部分もあるだろう。だが、グローバル化のすすむ今日の国際社会では、安全保障問題は近隣諸国だけの問題ではない。北朝鮮のミサイル発射は大問題だが、国連要員や一般市民に多数の死者を出しているイスラエル軍の攻撃非難には消極的。これでは、日本は身近な脅威にのみ大騒ぎする、自分勝手な国だという誹りを免れない。これは国際貢献を通じて平和主義をアピールしていこうという日本にとって、大きなマイナスである。

 また、アメリカのイスラエル擁護を黙認することは、日本のアジア外交に悪影響を及ぼす。7月24日のASEAN外相会議では、イスラエルを非難する特別声明が採択され、日本も賛成している。非難 声明採択を強く主張したインドネシアやマレーシアなどASEANのイスラム諸国や、イスラエルの攻撃により自国の国連要員を殺害された中国との関係を考えると、日本はただ非難声明に賛同するだけでなく、同盟国であるアメリカに対しはっきりと批判の声をあげるべきである。

 中東石油への依存度が高い日本にとって、エネルギー安全保障の観点からも、中東地域の安全保障問題は日本にとっても重要課題だ。中東産油国との関係を考えれば、国際社会の潮流から外れたアメリカのイスラエル擁護を黙認してはならない。日本は北朝鮮問題同様、中東情勢にもっと積極的な関心を示すべきである。アメリカのダブル・スタンダードを黙認していては、せっかく北朝鮮に対して示した強硬な姿勢が説得力を持たなくなる。イスラエル問題に対しても、日本の積極的な関与を求めたい。
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