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2010-12-22 22:14

菅首相は、民主党内紛にこだわらず、国民目線に戻れ

角田 勝彦  団体役員
 民主党内の反小沢派と小沢派の内紛は、コップの中の嵐の段階を過ぎて国会運営に影響する段階に至った。自公両党は、12月21日の国会対策委員長会談で参院で問責決議を受けた仙谷長官と馬淵国土交通相が辞任しない限り、来年1月招集の通常国会では両閣僚がかかわる案件の審議には出席しない方針で一致していたが、菅首相と小沢氏の20日の会談が決裂したことを受けて、野党各党は小沢氏の証人喚問要求を強めたのである。民主党内には同調する意見もある。菅首相もいらだっているようである。しかし小沢氏の証人喚問実現で円滑な国会運営が保証される訳ではなかろう。中心課題は仙谷長官などの辞任であり、菅首相は、この際、回復したと強調する政治指導力を発揮して、国会の円滑な運営のために、小沢問題とともに仙谷問題を処理すべきである。

 我が国の目下の緊急案件は、経済、具体的には来年度予算である。外交面では、最近の日米共同世論調査(12月22日付読売)において、日本側で「日米関係が悪い」と見る者が40%と33%の「良い」を初めて上回ったなど問題は尽きないが、混乱をもたらした鳩山外交を修正しての着実な進展が努力されている。たとえば、菅首相が17、18日の沖縄訪問で基地負担軽減にもつながるとして、辺野古(移設)案の必要性を強調したことは、第一歩として評価される。

 安全保障面では、17日に防衛力整備の基本方針となる「防衛計画の大綱」と、来年度から5年間の「中期防衛力整備計画」が閣議決定された。昨年策定される予定が民主党政権発足で一年間延期されたものだが、中国について、軍の近代化や周辺海域での活動活発化を挙げて「このような動向は透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項」と指摘し、南西諸島防衛を強化する方針を明記した。尖閣事件にも鑑み時宜を得たものであろう。なお、これは国際関係で「軍事面の論理は、政治の論理と別に、粛々と展開される」という筆者の持論とも合致したものである。中国政府も尖閣周辺海域へ配備する大型漁業監視船の態勢を拡充し、常時巡航させる方針を決めたと報じられる。

 そこで中心課題となるのが、経済社会問題である。補正予算成立後の最近の世論調査でも「菅内閣は今の経済情勢に適切に対応しているか」との設問に対して、「そうは思わない」が83%に達している。政府は来年度の経済見通しについて、実質GDP成長率を1.5%(名目成長率は1.0%)と見るが、これは金融危機による景気後退から脱し、3年ぶりのプラス成長(実質成長率3.1%を見込む)となる本年度の半分である。来年3月に家電エコポイント制度が終わり、政策効果がはげ落ちることや、世界経済の減速による輸出の伸び悩みで、成長のスピードは大きく落ちるのである。雇用面では、本年度5%台で推移している完全失業率が来年度には4.7%まで改善するとしているが、10月1日時点の大卒内定率は過去最低の57.6%で、1999~2004年の「就職氷河期」より悪い。

 成長の気運を持続することが必要である。とくに雇用は重要である。短期施策のほか、来年度予算に盛り込まれた新成長戦略・雇用対策は、環境・エネルギーや医療・介護、観光、アジアへの社会資本展開など7つの戦略分野を推進し、2020年度までに約500万人の雇用をつくり出す計画である。国民のために予算の早期成立は不可欠である。民主党政権は政権を託した国民の期待を裏切ってはならない。
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