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2010-12-20 14:47

(連載)問われる日米同盟の守備範囲(1)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 今年は日米安全保障条約改定50周年になる。冷戦終結を機に、細川政権は対米依存の脱却を目指して「自主的」な安全保障政策を模索した。しかし、中国の「平和的台頭」と朝鮮半島の緊張によって、日本国民はこの地域の安全保障が脆弱で、アメリカとの同盟がどれほど重要かを再認識した。これは間違いではない。しかし、私はグローバルな観点からの日米同盟の重要性を強調したい。

 日米同盟に関する現在の日本国内の議論が二国間とアジア太平洋地域にばかり集中することは、残念でならない。すなわち、日米同盟は東アジア全域に安定と自由主義秩序をもたらす「公共財」として不可欠だという議論である。日本は、アメリカの安全保障の傘の下で政治的安定と経済的繁栄を享受しながら、他方で、日米同盟のゆえにイラクやアフガニスタンのような「アメリカの戦争」に巻き込まれるのを不本意であるとする議論である。しかし、私は、日米両国はより長期的で世界的規模の観点から日米同盟のあり方考慮せねばならないと思っている。忘れてならないことは、世界各地のアメリカの同盟諸国は日本と共通の価値観と国益を持っていると思うからこそ、日本を信頼できるパートナーと見ているのである。以前にも述べたように、スエズからパールハーバーまでは日米同盟の当然の守備範囲なのである。我々は、米国との、この必要欠くべからざる戦略協調を深化させるために、もっと大胆になるべきである。

 非常に興味深いことに、自由民主諸国の間でも日米同盟は二国間ないし地域レベルのものと見られているようだが、安倍政権と麻生政権の時期に日本とNATOは緊密な関係を模索している。日本国際フォーラムが11月22日に開催した外交円卓懇談会において、イギリスのデービッド・ウォーレン駐日大使が日米同盟を「排他的」と述べた際に、私は少し困惑した。技術的に言えば、ウォーレン大使の言う通りで、この同盟関係はアメリカと日本の二国間条約によって成り立っている。また日本の防衛装備調達もアメリカ製の兵器に依存している。日本の防衛市場の開拓に熱心な政策形成者にとって、現在の日米同盟が「排他的」に見えることは何ら不思議ではない。

 しかし、私は、国際社会で広く思われているよりも、日米同盟は「開放的」だと強調したい。日本にとって、この同盟は、世界の中で自らの立場を強めるステータス・シンボルである。『百花斉放』の本年6月21日と22日の連載投稿で述べたように、両国の同盟関係は、1960年代と70年代にそれぞれに起きたイギリスのインド洋からの撤退とイランのシャー体制の崩壊を機に、グローバルなものに変貌していたのである。アメリカ第7艦隊が作戦範囲を拡大したのは、このような事態を受けてである。(つづく)
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