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2010-12-08 10:19

(連載)菅首相は内閣改造に踏み切れ(1)

角田 勝彦  団体役員
 発足6ヶ月、菅内閣の支持率は危険水域を大幅に下回った。政権維持のためのみならず、喫緊の景気回復の実現に必要な国会の円滑な運営を図るためにも、菅首相は、仙谷官房長官人事を含む内閣改造を実施すべきである。最近の全国世論調査(12月3~5日読売新聞)で、菅内閣支持率は25%に下がった。「衆院比例選でどの政党に投票しようと思うか」では、自民26%が民主22%を上回った。これは11月23/24日共同通信が実施した同様の調査で、菅内閣の支持率が23.6%と政権維持の「危険水域」とされる30%を大幅に下回った趨勢を確認するものである。また仙谷官房長官と馬淵国土交通相への参院での問責決議可決は、法的効力はともあれ、政権交代につながった先例があり、菅内閣への重圧となっている。事実、自民党は仙谷氏らを更迭しなければ、来年の通常国会で審議拒否する構えである。野党各党は「政権末期だ」との受け止めで、ほぼ一致している。

 6月4日発足直後には64%の支持率(6月8~9日読売新聞)を誇った菅内閣の人気が、かくも低落したのには、(小沢元代表を巡る)政治とカネ、外交・安保(普天間移設、中国漁船衝突事件、北朝鮮の韓国砲撃)及び景気対策等に関し、菅内閣と民主党への不満が鬱積したためであるが、根本には「政治主導」「有言実行内閣」を名乗りながら、実績が上がらず、右顧左眄する政府へのいらだちがある。とくに国民の直接的に強い願いである景気回復の目途が立たないことへの不満は強い。

 65%に上昇した菅内閣不支持の理由の第一は「首相に指導力がない」で36%だった。「普天間問題は菅内閣のもとで解決に向かうのか」という上記世論調査の設問に対し「そうは思わない」が85%だったのは、国民の失望感を如実に示すものであろう。菅首相が「平成の開国」と意欲を燃やす環太平洋経済連携協定(TPP)参加についても、全国の農業従事者260万人(農協関係者950万人)と結びついた与野党の国会議員は多い。11月30日の反対派会合には民主党議員60余人が集まった。民主党が中心の議員連盟「TPPを慎重に考える会」発起人名簿には衆参114人の議員が名を連ねている。来春の統一地方選もあり、菅首相の腕力から見て、TPP参加実現はどうせ困難と見る者は多い。

 このような状況では、国民の間に、蛮勇をふるう英雄への待望論が生まれるのは必然である。新たな顔に期待が寄せられる。上記世論調査での「衆院比例選でどの政党に投票しようと思うか」の設問に対し、自民、民主にみんなの党の9%が続いた。民主国家の国民は、わがままな主権者として、早急に成果を求め、変化に期待する。米国の11月の中間選挙においても、2008年に初の黒人大統領を選んだ米国民の熱狂は、わずか2年で冷め、民主党は敗北した。さらに保守派ティー・パーティーやペイリン前共和党副大統領候補の動きを見ると、古代ギリシャの哲人プラトンが「大衆の手に移された政治は『衆愚政治』に堕し、さらには最悪の『僭主政治』に転落する」と喝破したことが想起される。(つづく)
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