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2010-11-30 07:33

自民は「首相問責」で勝負するしかあるまい

杉浦 正章  政治評論家
 「小沢の政治とカネ」と「仙谷問責」という政権直撃型の大障害を2つも抱えて民主党政権のあえぎが聞こえる。首相・菅直人も幹事長・岡田克也もアリバイ作りのような党首会談や発言を繰り返し、問題の本質に迫れない。らちがあかないとみた自民党は、1月の通常国会冒頭で首相・菅直人に対する問責決議案を可決させる戦略を描き始めた。法的拘束力はないが、政権を揺さぶり、一挙に解散か総辞職を実現させようという荒技である。

 言わなきゃいいのにと思える発言を繰り返す官房長官・仙谷由人は、やはり言語中枢に問題があるのかも知れない。11月29日の記者会見でも「衆院では不信任決議案が否決されている。参院には不信任をして内閣を倒す権限はない。辞任する気は全くと言っていいほどない。今の職務を全うするだけだ」と一見“理路整然”と開き直った。テレビで見たが、ドスの利いた声で恫喝するような答え方であった。しかし、これは政治家でなく、やはり「法匪」の理論だ。「内閣を倒す権限がない」問責で、福田・麻生両内閣が倒れていることを忘れている。それも民主党が出した問責決議が影響して倒れたのだ。問題の焦点は、中学生でも知っている参院の法的立場の問題などではなく、両院のうち一院が官房長官・仙谷由人としての存在を否定したという政治論にあることを理解していない。保身に頭がいっぱいで、憲政の常道を無視して、詭弁(きべん)をろうしているにすぎない。

 まさに仙谷は政権最大のアキレスけんとなったが、もう一つの大アキレスけんが小沢一郎だ。菅は、両足のアキレスけんに直撃をくらっている形なのだ。その小沢は、29日夜「地方の危機感は強い。地方議員から反乱が起こると民主党政権が根っこから崩れる。菅政権は地方への危機感が薄い」と“地方反乱”論を展開した。菅内閣について「もうしょうがないと思っている」と、「さじを投げた」ともいう。しかし、この発言は仙谷にまさるとも劣らない唯我独尊ぶりだ。なぜなら民主党地方選挙連敗の責任の半分は、自分にあることに気づいていないか、棚上げにしている。「政治とカネ」の国会招致を拒否し続け、岡田をして「統一地方選挙や野党との連携の障害」とまで言わしめた。

 事実、不戦敗の沖縄知事選を始め、金沢市長選、福岡市長選で民主党は、出ると負けの選挙を余儀なくされている。一番ひどいのが千葉・松戸市議選で、11人の公認候補を立てたが、20代と30代の新人2人が当選しただけ。現職は、党県総支部幹事長を含む4人全員が落選だ。自民党が「いま総選挙をやったら戻れる」と「敵失民主」からの政権奪還を思っても不思議はない。こうした中で菅は党首会談に応じたが、まさにアリバイ作りで中身なし。他方で、岡田が29日の党役員会で「政治倫理審査会における小沢招致の議決もあり得る」と表明したが、これもアリバイ作りだ。議決には強制力がなく、かつて代表だった鳩山由紀夫も議決を無視して、出席しなかった。とても小沢に対する“離党勧告”まで視野に入れた腹の据わった話ではあるまい。こうした政権首脳陣の態度にしびれを切らした自民党が、通常国会冒頭の問責決議案可決を戦略に描き始めた。同党幹部は筆者に「もう一挙に勝負に出るしかない」と漏らした。菅は内閣改造という“仙谷切り”を念頭に置いているようだが、これをなし得なかったら、菅政権は通常国会冒頭から地雷原に突入する。 
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