国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-11-25 07:43

砲撃事件でとりあえず政権の危機を乗り切った菅首相

杉浦 正章  政治評論家
 死者が出ているのに、北朝鮮の砲撃を民主党幹部が、不謹慎にも「神風」とか「天佑」と述べているというが、いくら永田町でもお粗末だ。しかし、実態的には、この砲撃がいきり立った野党に水を差したことも確かだ。11月26日に補正予算が成立して、たとえ野党が官房長官・仙谷由人と国交相・馬淵澄夫の問責決議案を参院で成立させても、国会は空転のまま12月3日の閉幕を迎える可能性が高い。与野党が雌雄を決するのは、来年1月の通常国会冒頭からとなろう。

 影で高笑いしているのが、民主党元代表・小沢一郎だろう。小沢は先週連日のように支持議員を集めて会合を持ち、気勢を上げている。24日も夜20人を集めて会合を開いた。その狙いには、終盤国会にかけての国会招致を回避し、末期症状の菅に代わって政権を狙う、という両側面がある。野党は、本来なら菅政権のていたらくと小沢招致をからめて追い込む予定だったが、砲撃が問題の在りかを外した。「政治とカネ」の集中審議を26日に予定しているが、小沢を呼ぶわけではない。小沢はほおかむりをし続ければ、すぐに会期末だ。もっとも問題は事実上棚上げされるだけであり、強制起訴を受けての通常国会は小沢にとって“火責め、水責め”の場となろう。

 一方で、砲撃は沈んでいた菅を元気にさせた。最優先すべき“仕事”が転がり込んだからである。渋っていた党首会談も、閣僚失言や「政治とカネ」でなく、焦眉の急の課題で開催できた。スポーツ新聞や民放テレビが、菅バッシングの波に乗って「砲撃後の対応が遅い」とばかの一つ覚えのような難癖をつけているが、筆者は、最初から動きを見ていたが、総じて菅の対応は悪いものではなかった。マスコミの編集局のスピードを求めても、無理だ。野党も重箱の隅をつつくべきではない。政権にとって最大の収穫は、補正予算成立のめどが一挙に立ったということだろう。自民党が補正前の問責採決を渋る公明党に配慮せざるを得なかったからだ。

 自民党は、補正が成立する26日に仙谷と馬淵の問責決議案を上程する予定で、野党の賛成多数で可決される公算が高い。そうなれば柳田稔の法相辞任に次ぐ、仙谷、馬淵の辞任問題が俎上(そじょう)に登る。しかし、菅にとって政権直撃となる両者の辞任、とりわけ仙谷の辞任だけは、何としてでも回避せざるを得まい。菅は、問責決議案が可決されても罷免をしない方向だ。国会は当然空転するだろうが、空転のまま会期切れとなる可能性が高い。したがって菅政権を揺さぶる課題は、すべて棚上げ状態のままとなり、決着の場は通常国会冒頭からとなるだろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム