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2010-10-25 07:26

「逃げ菅」で政権直撃の補選敗北

杉浦 正章  政治評論家
 「負ける戦いは、戦わない」というのが首相・菅直人の「政治信条」のように見える。政権の「信任度」を占う北海道5区の選挙応援に選挙期間中一度も行かず、政党のリーダーとしての立場を放棄したかに見える。首相が「候補者を見捨てる」姿勢では、閣僚もやる気を無くし、たるむ。行政刷新担当相・蓮舫に至っては、街頭演説で候補者の名前を間違えるという失態。民主党候補は、負けるべくして負けたし、菅は自ら求心力低下を“選択”したのが実態だ。

 選挙は少しでもおごりや油断があると勝てない。2月の長崎知事選がいい例だ。おごりにおごった民主党幹部が、小沢以下応援したはいいが、利益誘導発言で選挙民を甘く見て、敗北。それが落ち目の首相・鳩山由紀夫に退陣への追い打ちを掛けたが、今回も政権直撃型敗北だ。確かに菅は9月9日に代表選の札幌街頭演説会で候補者・中前茂之を壇上にのせ、挨拶させている。まさかそれでいいと思ったわけではあるまい。いや、いいと思ったのかも知れない。選挙の勝負は、言うまでもなく10月12日の告示で選挙戦に入ってからとなる。候補者側が敬遠した森喜朗は、補選の応援に行けなかったが、今回は菅はまだ敬遠されていない。明らかに自分の意思で行かなかったのだ。

 原因は何か。菅が尖閣事件のビデオを見ないことと同じではないかと思う。近ごろ菅は「逃げ菅」が高じて、「閉じこもり政治症候群」とでも言うべき精神状態に陥っている。国のリーダーとしての役割を果たしていない。中国首相・温家宝との会談では、焦点のゼネコン社員の解放を求めていない。何のための会談か、という追及を国会で受けている。漁船衝突のビデオは見ていない。国会答弁は、菅を名指しされたにもかかわらず、官房長官・仙谷由人に任せっきりで、仙谷の迷走を引き起こしている。加えて小沢の国会招致も煮え切らない。そして今度の「負ける選挙には応援に行かない」である。総選挙で華々しく消費増税を打ち出した積極姿勢と様変わりである。消費税の反発の大きさに、あつものに懲りてなますを吹いているのであろう。この菅の政治姿勢が閣僚に影響を及ぼさないわけがない。蓮舫の“国会ファッションショー”はその最たるものだが、蓮舫は応援演説でも中前を前にして「知名度が上がらないんです。古い政治のウミを洗い出すため、助けてください」と言ったまではよかったが、「前原…あぁ、中前さんだ」と間違えたという。知名度は上がらないわけだ。

 もちろん敗因は、小沢強制起訴に象徴される「政治とカネ」に始まって、「戦後最大の対中外交の敗北」、仙谷の国会審議における暴言、マニフェストの幻影化などで、民主党政権の“政治”そのものが問われた結果だ。とりわけ「政治とカネ」では、違法献金事件で団体として有罪判決を受けた北教組が、表立って動くことができず、有権者の反発も強かった。共同通信社が実施した出口調査によると、「政治とカネ」問題を「投票の判断材料にした」との回答は58.5%に達した。加えて菅の消極姿勢が補選を負けるべくして負けさせ、民主党に国政選挙での連敗をもたらした。民主党は応援に行って負けると批判の出るような政党なのだろうか。野党はこれで勢いずく。小沢の証人喚問要求で民主党に揺さぶりを掛けて、国会運営の主導権を握ろうとするだろう。しかし度が過ぎて、国民生活に影響の出る補正予算案を人質に取るようなことをすれば、世論の反発を招く。いずれにせよ国会は対決基調で推移する。民主党はますます解散できない状況となり、自民党は早期解散を狙う。
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