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2010-09-22 10:11

(連載)ペトレイアス陸軍大将が語るアフガニスタンの行方(3)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 オバマ大統領はアフガン戦争への積極関与を明言しているが、大統領が示した2011年7月の撤退期限には政策形成者と軍事戦略家の間では懸念を抱かれている。ジョン・マケイン上院議員は「敵にこれから撤退すると言いながら、勝利を期待するのは虫がよすぎる」と述べている。海兵隊司令官のジェームズ・コンウェイ大将は「オバマ大統領が示した撤退期限によって、タリバンの士気が高揚する」と警告し、任務の完了まで海兵隊が駐留し続けるものと考えている。そうした懸念を和らげるため、ペトレイアス大将はNBC人気番組「ミート・ザ・プレス」のデービッド・グレゴリー氏とのインタビューで「ホワイトハウスは、不測の事態が起こりうるという戦争の性質をよく理解している」と述べた。

 アフガニスタンの任務を成功させるために、多国籍軍は軍事面でも非軍事面でも新たなアプローチをとろうとしている。ペトレイアス大将は「特殊作戦部隊による反乱分子掃討を強化し、敵の指揮官235人を殺害あるいは捕縛した。同時に、特殊作戦部隊による現地部族指導者との対話や医療行為が地域社会建設にも寄与した」と述べている。社会経済状況の改善によってテロリストが、該当地域を自分達の根拠地または聖域だと主張できなくなる。地域社会の理解は、死活的に重要である。しかし、ペトレイアス大将は「アメリカは、アフガニスタンの部族と族長達を充分に理解していないので、地域社会建設の協調深化がイラクの場合ほど進んでいない」と指摘する。

 国外からの脅威も重要である。アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領とランギン・ダドファール・スパンタ国家安全保障担当補佐官は「アメリカは、パキスタンからアフガニスタンのテロリストに出されるリモート・コントロールにもっと留意すべきだ」と主張する。ペトレイアス大将は、両氏の懸念を「正当なものだ」と述べている。外交問題評議会のマックス・ブート上級フェローはジョン・ヌーナン氏とのインタビューで「アメリカ軍と現地大使館の関係もさることながら、関係諸国、国連、NGOとの協調も成功への重要な鍵となる」と答えている。アフガン戦争での勝利は可能で、この国も統治可能である。今年の11月19日から20日にかけてアフガニスタンへの権限委譲を議論するためにリスボンで開催されるNATO首脳会議を前に、ペトレイアス大将はアフガニスタン治安部隊の訓練の目的で2,000人の追加派兵を要請した。

 アフガン戦争の勝利には、アメリカ政府と国際機関、現地政府と部族、その他の関係を調整するという高度な技能が求められる。ペトレイアス大将はイラクでこうした微妙な政治的駆引きに対処する能力を示した。最も重要なポイントは、オバマ大統領の指導力である。カイロ、プラハ、シンガポールでの演説に見られるように、大統領はアメリカの優位を思い切って押し通すことに及び腰である。これも、大統領自身が早期撤退と経済重視を示唆する理由の一つかも知れない。そのような考え方では、危険な誘惑に陥ってしまう。ともかく、去る9月18日に行なわれた選挙は、今後のアフガニスタンのあり方に大きな影響を与えるであろう。(おわり)
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